執筆:日本財団ジャーナル編集部
事業として社会課題の解決に取り組むためには、団体の目的に適した法人格の選択が重要である。
非営利団体には、NPO法人や一般社団法人などさまざまな種類があり、それぞれに特徴や設立要件、税制上の優遇措置などが異なる。
この記事では、これから非営利団体の設立を考えている方、あるいは既存団体の法人化を検討している方に向けて、主な非営利法人の種類や特徴、選択のポイントを解説する。
1.営利法人と非営利法人の違い
営利法人と非営利活動法人との根本的な違いは、事業で得た利益の配分方法にある。
- 営利法人
- 株式会社、合同会社、合資会社などが該当。事業活動で得た利益を、株主などの出資者に分配することを目的としている。例えば、営利法人である株式会社は、商品の製造・販売、サービスの提供などを通じて利益を上げ、株主へ配当という形で利益を分配する
- 非営利法人
- NPO法人、一般社団法人、一般財団法人、医療法人などが該当。寄付金・支援金・会費・事業活動から得た利益を、社員や設立者などに分配することは認められず、事業活動を継続するために使用しなければならない。ちなみにここでいう「社員」とは、株式会社における株主のような、法人の意思決定に参加する権利を持つ構成員を指す
![[一般的な会社]
売上=費用+利益
利益を分配→株主/役員・従業員
[非営利法人]
事業収入・寄付金等=費用+利益
利益を次の活動資金に](https://assets.mama.aacdn.jp/contents/95/2025/11/1764292089109_riho0t9j5i.png?maxwidth=800)
2. 非営利団体の法人格の種類とそれぞれの違い
非営利活動法人は法人格の種類によって特徴、要件、優遇内容が異なる。ここでは、法人格ごとの詳細について解説する。
2-1. NPO法人(特定非営利活動法人)
保険、福祉、教育、まちづくり、環境保全、国際協力など、法律で定められた20分野など、法律で定められた20分野の社会貢献活動を行う団体。設立するためには10人以上の社員が必要となり、都道府県または政令市の長が管轄する所轄庁の認証を受ける必要がある。
法人税は、収益事業から生じた所得にのみ課され、収益事業以外には課されない。特に公益性が高いと認められた場合には認定NPO法人、特例認定NPO法人、指定NPO法人となることができ、寄付者への税制優遇などがある。
これらの詳細は後の章で解説する。
関連記事:NPO法人とは?収入源・メリット・設立の流れを簡単に解説(別タブで開く)
2-2. 一般社団法人
一般社団法人は、事業内容に制限がなく幅広い活動を行える。社員2名以上、理事1名(社員と理事は兼任可)以上いれば設立できる。
一般社団法人は法人税法上「非営利型法人」「非営利型法人以外の法人(普通型)」の2つに分かれる。どちらも非営利法人だが、法人税の課税対象となる所得が異なる。
非営利型の一般社団法人の課税対象は、NPO法人と同じ「収益事業から生じた所得のみ」。一方、非営利型法人以外の法人は、全所得に課税される。
2-3. 一般財団法人
一般財団法人は個人や法人が拠出した財産(300万円以上)を維持・運用し、その運用益を特定の事業に活用する団体。設立するには設立者1名以上(理事・監事と兼任可)、理事3名以上、評議員3名以上、 監事1名以上の最低7名以上が必要となる。
大きな特徴は、一般的な法人が「人の集団」に法人格が与えられるのに対し、一般財団法人は「一定の財産」に法人格が与えられる点にある。
また、一般社団法人同様、事業内容に制限がなく幅広い活動を行えるが、法人税法上「非営利型法人」「非営利型法人以外の法人(普通型)」の2つに分かれ、課税対象も同じ。「非営利型法人」の特定の事業の具体例としては、奨学金の支給、研究活動への助成、芸術・文化活動への支援などがある。
2-4. 公益社団法人・公益財団法人
公益社団法人・公益財団法人は、一般社団法人・一般財団法人のうち、公益性が高いと行政庁(内閣府または都道府県)から認定を受けた団体。公益目的事業の割合が費用額において50パーセント以上を占めるといった、厳しい認定基準を満たす必要がある。
また公益目的事業は非課税であり、寄付者も税制優遇を受けられる。
公益性が高いと認定されるには、学術・技芸・慈善などに関する事業であって、不特定の多くの人の利益に寄与する事業を行うことが必要となる。
2-5. 社会福祉法人
社会福祉法人は、介護、障害者支援、児童福祉など、社会福祉事業を行う団体。具体的には特別養護老人ホームや介護老人保健施設、障害者支援施設、保育所の運営などが挙げられる。設立には、最低6名以上の理事と2名以上の監事が必要だ。
事業運営には、社会福祉法に基づいて国や自治体からの指導監督を受ける。社会福祉事業の適正な運営確保のために、事業報告書の提出、会計監査、運用状況の報告などが求められる。社会福祉事業は非課税であり、さまざまな税制優遇がある。
2-6. その他の非営利法人
その他にも次のような非営利法人がある。
- 学校法人
- 私立学校の設置・運営を行う
- 医療法人
- 病院や診療所などの開設・運営を行う
- 宗教法人
- 神社、寺院、教会などの宗教団体が、礼拝施設の所有・維持や教義の普及などの宗教活動を行う
自分たちで取り組む事業が、法令で定められた特定の事業に該当するか、また、どのような組織形態で運営したいかなどを考慮し、法人格を選択するようにしよう。