目標をより具体的にイメージできる考え方
一方、バックキャスティング的な考え方(コーチング思考)については、どうでしょうか? この思考方法の出発点は「未来」です。目標であれば、それを達成したあとの姿ですし、課題や困難であれば、それを乗り越えたあとの姿です。
ライザップの有名なコマーシャルを思い出してください。フォーキャスティング的考え方(解決思考)であれば、「痩せたいんです」と相談に来たお客さんに対して次のような質問をしていきます。
「あなた、なんでここまで太っちゃったの?」(現状把握)
「何が問題なの?」(現状把握)
「どうすれば痩せられると思う?」(解決方法)
これはすべて現在の問題を抱えた状況にフォーカスを絞った質問をしています。
一方、バックキャスティング的考え方(コーチング思考)であれば、目の前のお客さんは、目標を達成できる人、課題を解決できる人として、「達成できたあと」にフォーカスを絞った質問をしていきます。「痩せたあと、まわりの人から、どんなふうに声をかけられたい?」とか、「痩せたあと、どんな服を着たい?」などです。
この質問で、お客さんは達成できたあとのイメージングをし、その目標をより具体的にしていきます。目標をより具体的にはっきりイメージすることで、合理的に手段を考えていく思考方法です。
たとえば、「いまからミステリーツアーに行きますよ。集合時間は午後2時です」だけだと……
●歩いていったらいいか?
●電車に乗ったほうがいいか?
●飛行機を選んだらいいか?
など具体的な手段はなかなか取りにくいものです。
ですが、「あしたの午後3時、羽田空港のBカウンターに集合ね」といわれたら、皆さんの自宅からいちばん近いルートや手段を使って目的地に向かいますよね。どこに行くかによっては、持ち物も変わってくるかもしれません。数百メートル離れていて、約束の日時も決まっているのに、目的地に歩いて行こうとは思わないですよね。
現実には、沖縄に住んでいる人があしたの午後3時に羽田空港に集合といわれているにもかかわらず、目的地が明確ではないばかりに、徒歩や自転車で羽田空港に向かって出発するようなことが起きてしまっています。飛行機を使えば数時間でたどり着くところが、何日かかっても目的地にまだたどり着かないことがありえるのです。
2つの思考方法をうまく使い分ける
●あなたのチームはどこに向かっているでしょうか?
●あなたの会社は何をミッションとしていますか?
●上司や経営者であるあなたは、十分に部下や社員とそのことを話し合っていますか?
●何か問題が起こるたびに、現状と解決方法だけ質問していないでしょうか?
バックキャスティング的考え方(コーチング思考)ができない(未来の目標やそのイメージができない)ことについて、部下や社員を非難するような上司や経営者も存在するようです。
フォーキャスティング的考え方(解決思考)も、バックキャスティング的考え方(コーチング思考)も、どちらがよくて、どちらが悪い、ということはまったくありません。状況によって使い分けができればいいだけです。
ぜひ、経営者や管理職の方は、フォーキャスティング的考え方(解決思考)だけでなく、バックキャスティング的考え方(コーチング思考)を身につけてください。それがあなたの従業員や部下との1ON1を導くヒントになります。
バックキャスティング的考え方(コーチング思考)であれば、目的地を明確化し、全体像を眺める視点をもち込むことで、その手段を確実なものとできるのです。
●まとめ
2つの思考方法
1つめは、フォーキャスティング的考え方(解決思考)
2つめは、バックキャスティング的考え方(コーチング思考)
をうまく使い分けていきましょう。
尾澤 まりこ
合同会社ミライの芽 代表
※本記事は『1ON1に悩む管理職必須スキル コーチング思考』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
