◆オフィスに響き渡る突然の悲鳴
とうとう事件が起きてしまいました。Yさんの向かいの席にいた同期社員が、突然、大声で悲鳴を上げたのです。「何事かと思いました。とにかく悲鳴が聞こえたので様子を見に行ったのですが、なんとそこにはネズミのような小さな動物が走り回っていたんです。その動物は次々に机を渡り歩き、オフィスは悲鳴だらけになりました」
悲鳴が飛び交う中、床にしゃがみこんでネズミらしき動物を必死に捕まえようとしているYさんがそこにはいました。
「実は私もネズミは苦手だったので、逃げ惑うスタッフと一緒にオフィスの外に避難しました。しばらくしてYさんの動きが止まったので、そばまで近寄ると、彼女はそのネズミのような小動物をひたすらなでて、小さな声で『ごめんね、ごめんね』と言っていました」
Yさんは終始うつむいたままで、仕事も手につかない様子だったといいます。周りの同期たちも何もなかったかのように仕事を再開していました。
◆動物の正体と見えてきた課題

「なぜネズミを会社に持参していたのかを尋ねました。どうやら、入社の少し前に友人からハムスターの赤ちゃんを譲り受け、自宅に置き去りにできず、カバンにケージを入れて持参していたというのです。騒動を起こした日は、ケージから出して自分のお腹に巻いた布製の袋で温めていたからだそうです」
Yさんは、今回の件をとても反省しているようで、かなり落ち込んでいました。「入社の際に提示された持ち込み禁止物一覧に該当がなかったからです」とポツリと言っていたそうですが、和田さんのヒアリングが終わった後に辞表を出したそうです。
「持ち込み禁止一覧に記載がなかったからって……常識で考えればおかしいと思うのですが、それはわれわれの考えなのかもしれませんね。早速、社内規定に条文を追加することにします」
<TEXT/八木正規>
【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営

