◆ベンチで投手に話し込むのは「鬱陶しい」と思われるだけ
さらに言えば、甲斐が「一回ごとにベンチで投手と話し込む」場面をたびたび見かけるのだが、これもやめたほうがいい。
投げ終わってベンチに戻ってきた投手は、自分の世界にこもって1人でじっとしていたいときもある。あるいは、「話しかけないでほしい」と思うときもある。こうした微妙な投手心理をよく理解しているのが投手コーチなのだ。だからこそ、もし投手に話しかけたいのと思うのであれば、はじめに投手コーチを通したほうがいい。
たとえば、試合途中で降板し、少し時間が経ったときにあれこれ話し合うのなら、まだ少しは理解できる。降板直後は冷静さを失って頭のなかがヒートアップしているものの、30~40分ほど経てば、頭のなかがクールダウンされる。そうなれば、人の意見も冷静に聞ける姿勢になっていくからだ。
頭ごなしに、「ソフトバンク時代もそうやってきたから」という感覚的な理由だけで、甲斐がこうした振る舞いをしているとしたら、それはどうかと思う。これまでのルーティーンを貫き続けてしまえば、巨人の投手陣から信頼を得ることはこの先難しいのではないか、と心配してしまう。
<談/江本孟紀>
【江本孟紀】
1947年高知県生まれ。高知商業高校、法政大学、熊谷組(社会人野球)を経て、71年東映フライヤーズ(現・北海道日本ハムファイターズ)入団。その年、南海ホークス(現・福岡ソフトバンクホークス)移籍、76年阪神タイガースに移籍し、81年現役引退。プロ通算成績は113勝126敗19セーブ。防御率3.52、開幕投手6回、オールスター選出5回、ボーク日本記録。92年参議院議員初当選。2001年1月参議院初代内閣委員長就任。2期12年務め、04年参議院議員離職。現在はサンケイスポーツ、フジテレビ、ニッポン放送を中心にプロ野球解説者として活動。2017年秋の叙勲で旭日中綬章受章。アメリカ独立リーグ初の日本人チーム・サムライベアーズ副コミッショナー・総監督、クラブチーム・京都ファイアーバーズを立ち上げ総監督、タイ王国ナショナルベースボールチーム総監督として北京五輪アジア予選出場など球界の底辺拡大・発展に努めてきた。ベストセラーとなった『プロ野球を10倍楽しく見る方法』(ベストセラーズ)、『阪神タイガースぶっちゃけ話』(清談社Publico)をはじめ著書は80冊を超える。

