
陽だまりのようなアプリコットからインクがにじむような青紫まで、繊細なグラデーションをまとった花びら。育種家による工芸品のようなパンジー&ビオラと、花メーカーが長い年月をかけて育てあげた“暮らしの相棒”としてのパンジー&ビオラ――。エム・アンド・ビー・フローラの寄せ植え名人、難波良憲さんはそのどちらにも強い愛着を持っています。「育種家さんの花は刺激と憧れ、自分たちメーカーの花は、ユーザーさんのいちばん近くにいる頼れる存在」と語る難波さん。今回は、そんな難波さんの寄せ植えを例に、日本のパンジー&ビオラの“2つの魅力”と、上手な楽しみ方をご紹介します。
工芸品のような育種家パンジー&ビオラ――繊細な色と形の世界
一株のなかに、いくつもの表情がある

難波さんがまず敬意を込めて語るのが、各地の育種家が手がけるパンジー&ビオラ。なかでも心惹かれているのが、桂楓園さんが作る‘フェデネージュ’シリーズの青系だと話します。透明感のあるブルーがじんわりとにじむようなグラデーションになり、光の加減で見え方が変わる様子は、まさに“染め物”のよう。
こうした育種家ビオラの魅力は、
- 花びらの端から中心へと溶け込む繊細なグラデーション
- 1株の中でさえ1輪ずつ色合いが違う
- 表情の豊かさ
- フリルや多弁など、工芸品のような凝った花形
といった「情報量の多さ」。寄せ植えにひと株入れるだけで、そこに物語が生まれるような存在感があります。

ただし出会いは「一期一会」

一方で、育種家パンジー&ビオラは生産量が限られているため、流通数はごくわずか。1ポット千円前後というものも珍しくなく、人気品種は店頭でもネットでもすぐ完売してしまいます。最近は転売が問題になることもあり、全体としてやや“過熱気味”なムードも。
だからこそ難波さんは、「珍しい品種を全部追いかけようとするより、その年その場所で出会えた花を宝物のように楽しむ感覚がいいのかもしれませんね」と話します。
メーカーのパンジー&ビオラは「暮らしの相棒」
生産者とユーザー、両方にやさしい花を目指して

一方で難波さん自身は、花メーカー「エム・アンド・ビー・フローラ」の営業として、パンジー&ビオラを含めた多くの花を世に届ける役割を担っています。
メーカーの花づくりは、
- 生産者さんがそろって育てやすいこと
- ユーザーさんが失敗なく育てられること
この2点が大前提。そのために、何年もかけて試作・選抜を繰り返し、
- 花付きのよさ
- 病気や寒さへの強さ
- 草姿の乱れにくさ
などを細かくチェックし、「これなら安心」と判断したものだけが市場に出ていきます。
安定した花数と価格、手に入りやすさが大きなメリット

メーカー品種には、
- 初心者も花いっぱいを体験できる安定したパフォーマンス
- 流通量も価格も安定していて、同じ品種でたくさん揃えたいときにも入手しやすい
といったメリットがあります。
難波さんいわく、「メーカーのパンジー&ビオラは、日々の庭や玄関先を支えてくれる“暮らしの相棒”。長く咲き続けてくれる安心感や育てやすさが魅力です」。
