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投資の派手な成功談の裏にある〈不都合な真実〉…健全な投資かギャンブルかを見分けるための「たった一つの質問」【元外資系トレーダーが指南】

投資の派手な成功談の裏にある〈不都合な真実〉…健全な投資かギャンブルかを見分けるための「たった一つの質問」【元外資系トレーダーが指南】

投資の利益はどこから生まれるのか──その仕組みを理解することは、投資とギャンブルを見極めるカギになります。企業が生む価値の対価か、他の投資家の財布をあてにした値上がり益か。この違いを知ることで、投資の健全性が見えてきます。田内学氏による著書『お金の不安という幻想 一生働く時代で希望をつかむ8つの視点』(朝日新聞出版)より一部を抜粋して紹介します。

儲けたお金は誰の財布から?

「金は天下の回りもの」とはよく言ったものだ。お金は常に誰かの手元から、別の誰かの手元へと移動している。


では、投資で得られる利益は、いったい誰の財布からやってきているのだろう?


この問いは、投資とギャンブルの違いを見極める鍵になる。


たとえば株式投資で利益が出る場合、そのお金は主に2つの財布から来ている。

① 企業の財布

トヨタ株に投資したとする。トヨタは、自動車という移動に便利な商品を作り、顧客に提供することで利益を得ている。その一部が配当として投資家に還元される。これは「顧客の役に立った報酬」であり、社会に新しい価値を生んだ結果だ。

② 他の株主の財布

企業が新たな価値を生まなくても、噂うわさや思惑だけで株価が上がることがある。そのタイミングで株を売れば、利益は出るが、これは後から来た別の投資家が高く買ってくれただけだ。


もう少し複雑なケースもある。たとえば、トヨタが次世代の電気自動車を開発したというニュースで株価が上がった場合だ。これも投資の利益の出所は「他の株主の財布」だが、そこには「将来の顧客の役に立つかもしれない」という期待が込められている。この期待が実現すれば、①と同じように社会に新しい価値を生んだ結果と言える。

いずれにしても、株式投資の利益は、「企業の財布」と「他の株主の財布」の2箇所から来ている。そして、「企業の財布」から来るお金は、誰かの役に立った結果として生まれた報酬だ。


この構造は、株式に限らず、すべての投資に当てはまる。投資で得られる利益の出どころは、基本的に2種類しかない。

・誰かの役に立ったことに対する報酬
・他の投資家をあてにしたお金

この2つの違いを見抜くことが、「投資かギャンブルか」を見極める鍵になる。

健全な投資とギャンブルの見分け方

私たちは日々の生活で、食料や医療、住宅など、自分の役に立つモノやサービスにお金を支払っている。裏を返せば、「誰かの役に立った報酬」の多い投資は、私たちの暮らしを支え、社会の維持や発展に貢献している。これが投資の本来あるべき姿だ。


一方で、利益の大部分が「他の投資家をあてにしたお金」である投資は、新しい価値をほとんど生み出してはいない。投資家同士でただ、お金の奪い合いをしているのに近い。こうした投資は、ギャンブル的な要素が強い。

この視点を、いくつかの投資に当てはめて考えてみよう。
 

たとえば、不動産。


家賃収入は入居者の生活に貢献した対価だ。この家賃収入を目的にするなら、社会的にも健全な投資だと言える。そうではなく、「将来の値上がりが期待できます」と勧められた不動産投資は、「誰かが今より高く買ってくれること」に賭けているだけで、ギャンブル性が強い。

銀行預金も同様の視点で考えられる。


預けたお金は、企業や個人への貸し出しに使われ、新しい工場や住宅が作られる。その結果、新製品や快適な住環境が生まれる。この流れで得られる預金の利息は、「誰かの役に立った報酬」に他ならない。ここには「他の投資家をあてにしたお金」は一切含まれていない。だから、銀行預金はギャンブルとは無縁だ。

では、仮想通貨やFXはどうか。


これらも投資と呼ばれるが、その利益の多くは「他の投資家が高く買ってくれること」に依存している。市場に流動性をもたらすという一定の役割はあるものの、新しい価値を直接生み出すわけではない。その意味では、ギャンブル的要素が極めて強い。

ここまでを整理すると、投資の健全性を見極めるシンプルな質問が導き出せる。

「その利益は、誰の役に立った報酬なのか?」

この問いにうまく答えられない投資や、生活者としての自分が「お金を払いたくない」と感じる商品や事業への投資であれば、警戒した方がいい。詐欺の可能性さえある。

値上がり益ばかりを強調する投資は、「自分より高く買ってくれる誰か」が現れなければ成立しない。派手な成功談には、他人の財布をあてにした投資の要素が含まれている場合も多い。


そして、他人の財布を狙うということは、あなたの財布も誰かに狙われているということだ。

投資を始める前に、一度考えてみるといいかもしれない。


「自分はギャンブルをしたいのか? それとも健全な投資をしたいのか?」

ギャンブル的な投資を一概に否定するつもりはないが、それを健全な投資と混同するのは危険だ。


今の日本では、一発逆転を狙って、ギャンブル性の高い投資が好まれる傾向もある。ある意味、それも仕方のないことなのかもしれない。その背景には、経済構造の変化や、格差の固定化といった深刻な問題が横たわっている。

田内 学

元ゴールドマン・サックス証券トレーダー

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