いつまでも輝く女性に ranune
俺には“働かない才能”がある…〈資産1億2,000万円〉で夢のFIRE・早期退職した52歳会社員、たった2年足らずで再就職。理由は、ある朝襲われた「恐ろしい異変」【CFPが解説】

俺には“働かない才能”がある…〈資産1億2,000万円〉で夢のFIRE・早期退職した52歳会社員、たった2年足らずで再就職。理由は、ある朝襲われた「恐ろしい異変」【CFPが解説】

「1億円あればもう働かなくていい」。FIREという言葉が一般層にも浸透し、SNSでは「資産〇〇万円で会社を辞めました」という輝かしい投稿も目にするようになりました。しかし、その裏側にはあまり語られない“現実”があります。ファイナンシャルプランナーの小川洋平氏が詳しく解説します。

1億円でFIREを実現した50代男性「俺には“働かない才能”がある」

資産1億2,000万円を手にして会社を辞め、「もう一生働かない」と豪語した50代男性・佐藤義明さん(仮名・52歳)は、地元の中堅企業に30年以上勤めていた、ごく普通のサラリーマンでした。

退職時の年収は約500万円。独身の実家暮らしだったため生活費があまりかからず、30代からは浮いたお金をコツコツと積立投資に回してきました。「資産が毎月増えていくのが楽しくて、投資が一番の趣味みたいなものでした」と語ります。

そして50代に差しかかった頃、保有資産はついに1億円を突破。退職金も合わせると1億2,000万円に届くというところで、佐藤さんは「もう働かなくていい」と確信し、FIRE(早期退職)を決断したのでした。

ようやくきつかった仕事から解放される。世の中には働かないとつまらないという人もいますが、佐藤さんは「自分には“仕事をしない才能”がある」こう信じていました。

長年勤めた会社を去った翌日から、彼の“自由な生活”が始まりました。最初の数週間は、まさに天国のようだったといいます。

毎朝ゆっくり起き、のんびり朝食を取り、昔のドラマやアニメを片っ端から見返していました。仕事に行く必要がないため、着替えもせず、部屋着のまま丸一日を過ごす。髪もセットせず、髭も剃らず、誰とも会わない日々が続きました。

「これが自由なのか……」そう浸る佐藤さんでしたが、その自由は、少しずつ彼の生活リズムを壊していきました。

佐藤さんに突然訪れた、恐ろしい異変

「仕事がない」というだけで、生活習慣は驚くほどに乱れました。退職して3ヵ月が過ぎた頃には朝から酒を飲むようになった佐藤さん。最初は缶ビール一本だけでしたが、それはすぐにウイスキーのボトル一本へと変わっていきます。

朝から晩まで子どもの頃、若い頃に好きだったドラマやアニメを見続け、ソファでそのまま寝落ちして朝を迎える日が続いていました。

FIREしても資産は減らず、むしろ市場環境に恵まれ、なにもせずとも運用益が膨らんでいきました。お金に困らない生活を送る佐藤さんは、これまであまり縁のなかった夜の街にも足を運ぶようになりました。

自由に飲み歩き、遊び、帰宅は深夜――。そんな生活が半年ほど続いたある朝。佐藤さんは目を覚ますと強烈なめまいに襲われました。立ち上がることもできず、吐き気が止まりません。

少し落ち着いてからタクシーを呼び救急外来に行くと、医師からこう告げられました。

「自律神経のバランスが完全に崩れています。朝から晩まで飲酒、深夜の外出、昼夜逆転の生活で交感神経が過剰に働き続けたことが原因です」

一週間ほどで回復したものの、医師の言葉は重くのしかかりました。佐藤さんはこれまでの生活を思い返し「このままだと身体を壊してしまう」と気づいたのです。

初めて引退後の生活に“危機感”を抱いた瞬間でした。身体を動かさなければと考えた佐藤さんは単発のアルバイトを探し、まもなく食品卸業者の倉庫で荷分けの肉体労働をすることになりました。最初は全身が悲鳴を上げましたが、仕事を続けるうちに身体が慣れていき、気がつけば頻繁にシフトを入れるように。

帰宅すると疲労で夜の街に行く気力も無く、近所の飲食店で夕飯を済ませ晩酌をして、帰宅して風呂に入り眠るという質素な生活に戻っていきました。

半年が経つ立つ頃には若いバイト仲間や社員たちとも馴染み、元のマジメな性格からフォークリフトの資格を取りました。職場でも働きぶりが認められた結果、前職を退職してから2年足らずで再就職することになったのでした。

あなたにおすすめ