食楽web⚫︎蕎麦が好きでお酒が好きな小宮山雄飛さんが、美味しいお蕎麦屋さん、そして蕎麦屋呑みの魅力を伝える連載。今回は両国駅からほど近い名店『江戸蕎麦 ほそ川』を訪問。
ご主人の細川貴志さんが埼玉県吉川市で開業したのが1985年、2003年に現在の両国に移転してからも早22年。

農家に出向いて自ら買い付けた蕎麦の実の皮を剥いて、石臼で十割蕎麦を自家製粉。ご高齢になられた今でも、調理場を一人で回し……。
とにかくご主人の“うまい蕎麦”への美学とこだわりがいたるところに詰まっている名店、それが『江戸蕎麦 ほそ川』です。
蕎麦前は絶品「焼きみそ」を肴に日本酒を一杯
「焼きみそ」680円まずは「焼きみそ」で一杯。味噌と一緒に焼かれた蕎麦の実が、ほくほくと柔らかくて美味しい素朴な味。季節によっては、ふきのとうなど木の芽も入るんだとか。
これはお酒をちびり系ですね。ということでご主人おすすめの特別純米酒「磯自慢」を一合。ほそ川のオリジナルラベルというところに、蔵元との信頼関係も感じます。
「磯自慢(特別純米酒)」一合1350円上品な吟醸香で、ほんのり甘味が。シンプルな焼きみそとの相性抜群です。
そして待望のお蕎麦。まずは「冷かけそば(梅干入り)」1750円を注文しました。見てください、この澄んだかけ汁を。もう美しいとしか言いようがない。素材にとことんこだわるご主人だからこそできる蕎麦とつゆ。梅と一片の柚子皮のみというシンプルな構成も素晴らしい。
冷かけそば(梅干入り)1750円まずつゆを飲んでみると、めちゃくちゃ上品な飲み干せる味。かといって、上品過ぎると蕎麦を食べる時に薄く感じてしまうものですが、その塩梅が絶妙なんです。
蕎麦をすすると、上品なつゆの旨みと蕎麦の香りが見事に合っている。単なる冷たいかけ蕎麦ではなく、「冷やかけ」という1つの料理として完成してます。
甘酸っぱい梅をつゆに溶かすと絶妙に味変されて、1杯で2度美味しい。蕎麦はもちろん、つゆも最後の一滴まで飲み干してしまいました。ごちそうさまです。絶品の天ぷらとせいろで大満足
「穴子天ぷら」(野菜天付き)1800円。この日の野菜はご主人が厳選して仕入れる舞茸とかぼちゃ天ぷらは名物の「穴子天ぷら」。一番好きな調理が天ぷらだと言うご主人。活きのいい穴子は揚げると身のほうが締まり、ぎゅーっと反り返ってくると言いますが、見事に反ってます。
穴子の天ぷらで思わずお酒が進むお箸で切って食べると、単にふんわりしているだけではなく、しっかりした身の弾力も感じて非常にウマい!
〆はシンプルな「せいろ」。まずはそのままたぐって、何もつけずに一口。
「せいろ」1500円蕎麦の風味と水分量が絶妙で、ホントこれだけでも美味しくいただけます。かけつゆとは違い、濃口醤油を使ったつけつゆに蕎麦をちょこんと浸してすすると、「これぞうまい蕎麦!」と思わずにはいられないダイレクトな美味しさ。
いつも笑顔の店主・細川貴志さん現在は調理場がご主人のワンオペレーションということもあり、メニュー数などがやや少なめですが、一つひとつの素材と調理へのこだわりがすごいので、あれこれ食べなくてもしっかりと満足できます。
江戸の蕎麦の魅力を、存分に味わえる名店です。
(撮影◎橋本真美)
●SHOP INFO
江戸蕎麦 ほそ川
住:東京都墨田区亀沢1-6-5
TEL:03-3626-1125
営:11:30〜16:00(15時半LO)
休:月・火(臨休あり。訪店前に電話でご確認を)
アクセス:大江戸線・両国駅A3出口より徒歩1分、JR総武線・両国駅東口より徒歩6分
●著者プロフィール
小宮山雄飛
ホフディランのVo&Key担当。ミュージシャンの傍ら、グルメ番長として食のシーンでも活躍し、様々な雑誌やWEBサイトでの連載、レシピ開発なども行う。著書には『旨い!家カレー』『レモンライス レシピ』『小宮山雄飛 今日もひとり酒場』など。テレビ、ラジオ番組などの出演も多数。
