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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.104 2025年グッドデザイン賞から気になる文具をピックアップ! その3

【連載】月刊ブング・ジャム Vol.104 2025年グッドデザイン賞から気になる文具をピックアップ! その3



文具のとびら編集部

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、2025年度グッドデザイン賞(関連記事)の受賞アイテムの中から気になる文具をピックアップしました。

第3回目は、リングリーフの「monoklo 工作ノート」です。
(写真右からきだてさん、高畑編集長、他故さん)*2025年8月9日撮影
*鼎談は2025年10月25日にリモートで行われました。



工作体験は大事!

monoklo 工作ノート.jpgmonoklo 工作ノート(リングリーフ)



【高畑】簡単な工作の話をしたところで(前回記事)、次の工作の話をね。

【他故】はい、「工作ノート」ね。

【高畑】これ最初「何だ?」って思ったんですけど、例の水平開きノートなのね(関連記事)。

【他故】ナカプリバインなんだよね。これは本当に知らなかった。

【高畑】今回グッドデザイン賞に選ばれてなければ、しばらく気がつかなかったぐらい。

【他故】いや本当に。

――本当にそうなんですね。

【きだて】ちゃんとナカブリバインのロゴも入ってて。

【高畑】だから多分、中村さんのところで製本してるんだよね。

【他故】中村製作所のあのおじいちゃんがツイートしてたよ。「これが発売されます」って。すっかり忘れてたけど(苦笑)。

【きだて】これいま手元にA5タイプがあるんだけど、モノとしては要するに見開きA4の工作用紙を製本しました、っていう。

工作ノート1.jpg【他故】うん、そうだね。

【きだて】ノドからペリペリッと剥がすと、A5ノートからA4の工作用紙が取れる。しかし、久々に工作用紙を使うと楽しいね。

【高畑】ははは(笑)。

【他故】ちょっと今の話の腰を折るようで申し訳ないんだけど、僕は工作用紙って使ったことないんですよ。

【きだて】あれ、マジで?

【他故】これって年代? それとも地域? 僕の頃になかったって可能性ある?

【高畑】え、どうなんだろう?

【他故】本当に、小学生の時に工作用紙っていうものを見たことがなくて。中学でも高校でも見たことがなくて(笑)。

【きだて】あ、でも確かに俺も学校では使ってなかった。小学生の頃に絵画教室に通わされていたんだけど、俺が絵を描かずに画用紙で工作ばかりしたがるから、そこの先生が「これ使いなさい」って工作用紙を出してくれたんだ。

【他故】じゃあ、学校で使ってるかどうかは、またちょっと別物になるのか。

【きだて】うーん、別なんじゃないかな。地域性とも違う気がするし。

【他故】じゃあ、単純にその付き合い方というか、文化みたいなものに触れたか触れないかの話なのかな。

【きだて】可能性はある。

【他故】そうかー。

【高畑】僕もそうかな。売ってはいたけど、うちの学校も別にこんなちゃんと印刷されたものじゃなくて、普通の厚紙に「自分で線引け」だったと思う。

【他故】じゃあ逆に、文具王はこの工作用紙っていつ触れたのか、何か記憶ある?

【高畑】いや僕の家はむしろ、親父がもっとできる人だったので、こんな線が入っていない紙にちゃんと図面を引いてた。だって、この線が出来上がりのものに入っちゃうから、むしろない方がよくないかっていう感じだったので。ただ、言われてみれば、これがなくてもできるっていうのは、ちゃんと直角を取ったりとか平行を取ったりとかして線が引けるっていう前提がないとできないので。展開図っていうものの書き方を最初に教える時には、こういう図があった方がいいんだろうな。

【他故】展開図ね。うん、そうか。

【高畑】「この大きさの箱を作ります」って言った時に、どうやって作ればいいかみたいなのを説明する段階では、こういうものがあった方が分かりやすいんだなと思う。

【他故】方眼紙だったら、そこに書くことまではできても組み立てたらへにゃへにゃだけど、それをさらに組み立てて再現できるって意味で、やっぱり工作用紙は便利ってことになるのか?

【きだて】そうそう。

【高畑】だから、教える側に便利なんじゃないのかな。

【他故】なるほど。

【きだて】それもそうだし。あとね。やっぱ方眼入ってることで、同じものを量産するのがすごい楽。

【高畑】確かに。

【きだて】方眼があると、いちいち測って定規で線を引いて、みたいな手間がだいぶ削減されるから、例えば「サイコロを大量に作れ」とか言われた時は、圧倒的に工作用紙が楽だよね。1㎝とか5㎜刻みで、単位が方眼の刻みに依存しちゃうけど。

【高畑】これ、後から色を塗ったり紙を貼ったりするのが前提なんだよね。

【他故】そうだろうね。じゃないとこの線がそのまま見えちゃうから。まあ、設計の仕方っていうのの一番初歩の段階では、こういうのがあった方がいいんじゃないのかな。

【きだて】あ、でも小学生で初めて工作用紙を使った俺は、このグリッドがカッコいいって思ってた。

【高畑】そう、カッコいいはカッコいい。

【きだて】だから、絵画教室の先生はこれに色を塗れって言うんだけど、そんなのダセぇよ!って。

【他故】出来上がった段階でね。

【高畑】出来上がりのものにグリッドが入ってるのがカッコいいと?

【きだて】そう。このグリッド超かっけえじゃんっていう。

【他故】なんちゃってトロンみたいな感じでね(笑)。

【きだて】もう時期的にそんなんですよ、本当に。

【高畑】でも、それも分かるね。全然それでいいんじゃない。

【他故】なるほどね。

【きだて】これでタワーを建てたり、ビー玉を転がすレールを作ったりね。

【高畑】そういうのを作るときに、「細長いレールを作ります」とか、「横にこう立てて、こう転がり止めを作って」とかっていうのは、取りやすくていいよね。確かに楽だから。何もないところで、結構この大きさで同じ平行線を引いて作るのって、そこそこできるようになってからだよね。

【他故】そうだね。

【高畑】それは全然あってもいいと思う。無駄になりがちではあるんだけど、最初に形が作れるっていう意味では全然いいんじゃないかな。プラモデル用のプラ板も、最近目盛りが入ってるよね。

【きだて】そう。

【高畑】俺らの頃は真っ白のプラ板しか売ってなかったんだけどさ。今はグレーのプラ板に、すごい丁寧に方眼が打ってあるよね。

【きだて】薄い方眼が入ってたりするな。まあ、塗装前提なので分かるし。で使ってみると楽なんだわ。

【高畑】それでこれは、きだてさん的には、どこにでも持ち運んで使えるようにしましたっていうやつで。

【きだて】そうね、昔に子どもの工作ワークショップを手伝ってたときは便利だったろうな。もうカッターマットも持ち歩いてないし。でもやっぱり持ち運べる工作用紙はグッとくるね。

【高畑】ちょっと面白いよね。

【きだて】あと、いくら厚手の工作用紙でも、A4サイズを立てた状態では保管しづらいでしょ。へにゃっと曲がっちゃうし。それがノートとして製本されてると、立てて保存しておけるので楽だね。

【高畑】強いて言うなら、もっと大きいの作ってほしい。A4で広げるとA3とかさ。

【きだて】あるある。

【高畑】これ、あるんだっけ?

【きだて】あるよ。A5ノートがA4用紙になるのと、A4ノートがA3用紙になるのと2種類ある。

【高畑】大きいのがあるんだね。A5だと、展開図とか作ると、ここに折り目に被っちゃうから。

【きだて】そうなのよ。

【他故】あ、そうね。

【高畑】大きい方がいいよ。

【きだて】その真ん中の部分がすごくクッキリ折れているので、それを使って折れると楽なんだけどね。展開図都合にはなっちゃうんだけど。

【高畑】これも紙の厚みとか、紙の種類とか色々と出てくれてもいいかな。もうちょっと分厚くてもいいよね、みたいなのもあるし。

【きだて】まあでも、これ以上厚いと、ちょっと折るのが面倒くさいので。

【高畑】だから、ここなのかね。紙質的には、ケント紙みたいだよね。

【きだて】「ハガキ厚の上質紙」って書いてある。

【他故】あ、そうなんだ。

【高畑】厚みのある上質紙ね。

【きだて】この紙、折り目もきっちりつくし、折りやすいよね。

【他故】へえ。

【きだて】この厚みにしてはピシッと折れるし、なかなか良い工作用紙だと思う。

【高畑】まあそれで、丈夫な紙としても使えるから。

【他故】工作用紙そのものを知らないっていう前提で大変申し訳ないんだけど、これノートのかたちしてるからさ、裏面にも入ってるじゃん。これって例えば、工作用紙としては何か便利なところはあるの?

【きだて】だから、例えば表に線を引いて、組み立てる時はそっちへ裏返して、そのグリッドだけにできる。

【他故】うんうん。

【きだて】つまり、展開図は方眼に書けるけど、それを無かったことにして組むことができる。

【他故】なるほど、そうかそうか。そういう意味か。

【高畑】これは多分、こっちで両面タイプがもしあるんだったら、欲しいぐらいなんじゃないかなと思う。例えば、形を作るときはこっちに展開図を書いてるんだけど、組み立て時の反対側から、例えば穴を開けたいとか言ったときに、位置を揃えるとかって結構難しい。

【他故】なるほど。

【高畑】内側図面と外側図面が揃うって結構難しくて。そういう意味では、これでぴったり印刷が揃ってるんだよね

【他故】揃ってるよね。

【高畑】だからここの、表裏の印刷が揃ってる厚紙っていうのは、何か使い道ありそうな気がするね。

【きだて】これ、さっき作ってたマインクラフト風人形。展開図は表側に引いて、それを裏側にして折って作ってます。

工作ノート2.jpg【高畑】よくできてんじゃん。

【他故】めっちゃよくできてる。ちゃんと可動する部分がめちゃくちゃ多いし。

【きだて】そうそう。

【高畑】足のところとかアールをちゃんとつけてあるところとか。

【きだて】稼働しやすいようにね。YouTubeで作ってる人がいたので、それ見ながら。

【他故】本当だ。すごい、すごい。

【高畑】それ関節はどうしてるの?

【きだて】これは竹串で。

【他故】いいね。

【きだて】竹串で抜けないように、段ボールで抜け止めを付けて。

【高畑】今のきだてさんが作ったぐらいのものをパッと作りたいなと思って、展開図を書いて1時間、2時間でそういうかたちにまで持っていければ、工作の初級はそれでまずクリアできるわけじゃない。

【きだて】だと思うよ。

【高畑】結構それ大事で。今僕は3 D プリンターとかレーザーカッターとかで作るけど、基本はそこなんだよね。きだてさんが今書いたのと同じような展開図が分かるかとか、あとある展開図をこっちにそのまま押し出して立体にして、それを組み合わせて作るっていうのが基本なので。これ1冊使って何かを作っていければ、十分身につくのではないかと思うので。

【他故】そうか、面白いな。

【高畑】何かテーマを与えて、「これ1冊で作れ」みたいなのっていうのはあってもいいよね。

【きだて】工作王選手権みたいなので、これ1冊使って何か巨大なもの作れとかさ。

【高畑】デザイン系の学校とかだと、よくあるのは工作用紙1枚渡してこれでいかに高い塔を作るかとか、いかに離れたところに渡して崩れない橋を作るかみたいなやつ。材料はこれ1枚で、どう取ってもいいけど、取り方を細くすると弱くなるし、太くすると高くできないし、みたいなのを上手に使う。そういうのとして、これ1枚で何か作るとか、これ1冊で何か作るとかっていうのはアリだね。そういう制限があった方が面白いじゃないですか。

【他故】へぇ、面白いな。

【きだて】工作用紙、本当に使いやすくていいよ。木工用ボンドとかでぺたぺた接着できて。

【他故】あ、そういうものなんだ。

【きだて】紙に厚みがあるから、木工用ボンドをたっぷりめに付けてもよれにくいんだ。

【他故】よれない、耐えるんだ。

【きだて】そう。で水は吸うのですぐ接着できて、楽なんですよ。ペーパーセメントとか使わずに、木工用ボンドで全然サクサクいけちゃうっていう。

【他故】うんうん。

【きだて】何か久々に使ってすごい楽しかったから、ちょっと嬉しい。やっぱ工作用紙をちゃんと買おうと思って。しばらく忘れてたけれど。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】これはちょっと薄いので作品作りな感じだけど、ちょっと分厚いやつとかだと、机の中のちょうどいい仕切りを作るとか、ごく普通の話で使えたりするから。

【他故】片付けるために、例えばトレイを作ってみるとか、そういう感じのものもできるっていう。

【きだて】いいと思うよ。

【高畑】専用の入れ物っていうか、「ちょうどいい箱がないな」みたいなのは、そういうので作ったりとか。慣れれば別にこの紙じゃなくても作れるようになるけど、最初はこういう方眼があってというのはいいと思うし。あとは、それこそ親子で工作したりする時には方眼があった方が教えやすいかな。

【他故】そうね。

【きだて】それで、裏表方眼っていうのがすごい効くなという。

【他故】今回、こうやってみんなの話を聞いててすごく思ったのが、僕は結局、紙から工作をするっていう道を全然通ってないんですよ、子どもの頃。

【きだて】あら。

【他故】通ってないんですよ。何かの図面を取ってまで、自分で紙で工作をするってことをほぼしてこなかったから。その理由は色々とあると思うんだけども、工作用紙をもし知っていたら同じ道に行けたかもって今すごく思っていて。

【きだて】ははは(笑)。

【他故】「しまった、出会わなかった」っていう悔しさが(笑)。絵を描くか、プラモを作るかしかしてなかったから、少年時代に白い紙から立体を作るっていうことを経てないんですよ。もう悔しい(笑)。

【きだて】いや、それそれはそれで、別にいいんだけど。

【他故】でも、ちょっと悔しい。

【きだて】そっちの道も楽しかったよっていう(笑)。

【高畑】やり始めると、この立方体はこういう形を抜いてさ、ここにこの十字みたいなやつを作ってやったら立方体作れるけど、じゃあこことここの面をどうやって貼り合わせるんだみたいな話で、じゃのりしろ作んなきゃいけないじゃんとかだんだん出てくるわけだよね。のりしろをどっちに付けたらいいのかとか、のりしろを付けた部分を、例えば箱にフタを付けると、同じ大きさだと被せらんないから、じゃちょっとだけじゃフタを大きく作るとかってなった時に、どのぐらい大きくするかとかそういうのがあったりするから。今だと僕らの子どもの頃に比べたら圧倒的に段ボールいっぱいあるから。だから、Amazonの段ボールに目盛りを切っといてくれればさ。

【きだて】俺、段ボールで工作するときは0.8㎜厚のGフルートっていうすごく極薄の段ボールを使うのね。このGフルートの板にも方眼を打っといてくれると便利だろうな。

【高畑】ハピラが出してる。ハピラが出していてダイソーとかに目盛り付きの段ボールがあるよ。

【他故】あるんだ。

【高畑】モノタロウにもあるよ。

【他故】ああ、あるね本当だ。

【高畑】こういうのだと簡単に図面が作れそうだから。

【他故】これでサイズがいくつかあればってことだよね。

【きだて】この段ボールは厚みどれぐらいなんだろう?

【他故】ダイソーのやつは0.15って書いてあるね。

【高畑】多分その辺だと、きだてさんが使ってるのと同じような薄さで。

【きだて】0.15!?。

【他故】11㎝、8㎝、0.15㎝って書いてあるよ。

【きだて】これは段ボールではなくないか?

【高畑】段ボールじゃない?

【他故】「段ボールシート」と言ってるけどね。

【きだて】クラフトの厚紙なのでは? 段ボールで0.15は無理だよ、フルートが入らない。

【高畑】むしろその数字が信じられない系の。

【きだて】0.15の段ボールがあるなら、そら使いたいわ。

【他故】そうか、段ボールじゃないってことか?

――でも、段ボールシートって書いてありますけどね。

【きだて】絶対、段になってないだろう。でも、普通に使いやすそうだな。

――カードサイズなんですね。

【他故】大きさがいくつかあるんですよ。A4になるとさらに薄くなって、0.1cmになってるんですけど(笑)。

【きだて】マジかよ。それクラフト紙じゃん。でも、あるのはあるんだ。

【他故】そうだね。この構造でいいのかどうかは分かんないけど、あるはあるんだね。

【高畑】モノタロウのやつは厚みがあるね。多分、ただのボール紙じゃなくて。ただ画像が悪いからフルートが見えないんだけど。

【きだて】これこそGフルートぐらいっぽいな。

【高畑】こういうのもあるんだね。

【きだて】あるんだね。これモノタロウでちょっと買ってみよう。

【高畑】いやでもね、目盛りがあるっていうのは、ざっくり切る時には楽なんだよね。

【きだて】楽だよ。それこそね、そういうのが要らないっていうのは、上級者になってからでいいので。とにかく、何でもかんでも組み立てたいっていうときは、目盛り最高です。

【高畑】まあまあな大きさで平行線を引くっていうのはね、実は結構難易度が高いんですよ。

【他故】だろうね。

【高畑】正しく平行線を引けるっていうのは、まあまあ腕がないといけない。

【きだて】あとね、折り曲げるときも定規を使えばいいんだけども、まっすぐ折るっていうのも意外と難しくて。だからそれもね、目盛りさえあれば、何となく目安をつけてちょっとずつ折っていくっていうのができるし。色々と大事なんですよ。

【他故】そうだね。

【きだて】ただね、好みがあって。今回のこのノートとか、今文具王が話してる工作用紙って、5㎝ごとに太い枠が付いてるじゃん。これ嫌いなのよ。

【高畑】ああ、分かる。

【きだて】太い線を入れるなら、2㎝四方で入っててほしいんだよ。

【高畑】2㎝かどうかはあれだけど、もうちょっと主張しなくてもいいなっていう気がする。

【きだて】主張しないか、もうちょっと細かく入っててほしいの。組み立てるときに、この太線がデザインのジャマになってくるの。

【高畑】分かりますよ。

【きだて】だから、本当に5㎝単位で物を作るならそれは楽なんだけど。あと展開図を引くときに、意外とこの太線がジャマになってくる。特に、今回の「工作ノート」って、線がグレーじゃん。フリクションとかで線を引くと、この太いのと自分の引いた線が一瞬分かんないときがある。

【高畑】なるほどね。

【きだて】シャーペンとかね、その辺で引いてもやっぱ分かりづらいので。

【高畑】そこは青い線とか引いた方がいいかもしれない。

【他故】そうか。じゃあ工作用紙としては、青い線の方がよりベターな感じなのかな?

【きだて】まあそうだね。ちょっとね。グレーの線はやや使いづらい。ここは惜しいんだけれども。

【高畑】だからそういうのがさ、きだてさんもそうだと思うけど、それこそ日本人の身近な工作リテラシーというか、工作力をもうちょっと上げてはどうかと思うよ。

【きだて】本当にね、子どもが紙工作に触れないまま大人になるケースも出てくるでしょ。

下手すると「3Dプリンターが最初の工作です」みたいなことすらあり得るわけよ、今後ね。

【高畑】そうね。

【きだて】とはいっても、なにか作る時には展開図考えるとかそういう能力って要るわけじゃん。文具業界的にも、このノートとかを使ってでも、もうちょっと工作リテラシーを上げる手立てをするべきだよね。まあ、どうしたらいいのか全然分かんないんですけども(苦笑)。

【他故】ははは(笑)。

【きだて】工作用紙だけで語ること結構あったな。

【他故】やっぱ作ってる人の話は違うな(笑)。

【高畑】こういうので、箱を作るみたいな単純なことが案外、もうちょっと行ったら日曜大工になるわけじゃん。「ちょっとここに棚が欲しいな」とかになったりするじゃない。で、そういう時に、基本的なことっていうか、すごく簡単なことなんだけど、「こっちの長さとあっちの長さをこうしておけば箱になります」みたいなことって、もちろんできる人は当たり前なんだけど、できない人ってそういうのがさ。だから、ホームセンターに行って、「何を買ってきたらここに棚が作れるのか」とか、「冷蔵庫の上に何かを置きたいんだけれども、そのためにはどういう形のものが」とか、そういう想像力を働かせるために、基礎的な力として展開図から箱を組み立てるところからやる。こういう工作用紙で、箱とか車とか簡単な模型を作って、さっきのきだてさんのロボットみたいなやつが作れるっていうとこまでできると、基本的には大概の日曜大工はその延長にあるので。

【きだて】実際、俺は日曜大工でなにか作るときは、まず段ボールでミニチュアを作ってからにしてるもん。

【高畑】そういうことだね。段ボールで作れない人は、木でも作れないので。

【きだて】そうそう。だからモックを作っておくと、「あ、ここに棚付けたら便利だな」とか、「ここに取っ手要るな」とか、そういうのが分かりやすいので。日曜大工とかで大きい木材を買ってきちゃうと失敗できないじゃん。いっぺん切っちゃったらもうダメだしっていう。

【他故】それはそうだね。

【きだて】そうんなんだけど、こういう段ボールとか工作用紙とかで作っておくと、切っても取り返しつくじゃん。「もう1枚紙ちょっと継ぎ足してやればいいや」とかで。ていうのでいっぺん失敗してから、木材を切った方が圧倒的にいいし。

【高畑】紙だと最初は融通が効くので、要はその展開図の長さ通りに作ると箱が作れるんだけど、のりしろを付けたりとかし始めると、紙の厚みっていうのが無視できないっていうことに気がつくし。それが段ボールになると、それがよりはっきりするので。

【きだて】そうそう。

【高畑】例えば5㎝の立法体とかを作ったら、このボール紙だったら大体5㎝の箱になるんだけど、でも段ボールでその通りに作ると、多分5㎝のものが入らない。

【きだて】そうなんですよ。その分厚みがあるからね。

【高畑】厚みが内側にくるじゃない。逆に、外側もちょっと広がったりとかするじゃない。その厚みを考えなきゃいけなくなるし。3Dの抽象的な絵を描いてるときには無視できるんだけど、それを実際に組み立てようと思うと、リアルな世界にある、いろんな障害にぶつかるのさ。その経験があるっていうのは結構重要で。そういうところから多分、座ったら壊れるような椅子を作る人とかいるわけじゃん。それは積み重ねで、「あ、こうやると強いんだ」とか「弱いんだ」とかも段々分かるし、こういう構造を持たないなとか、あと組み立てがそもそもできるかできないかとか、段々分かってくるので。木の箱を作るときは、木の厚みも重要になるし、ネジをどこから入れるんだとなるから。

【他故】うん。

【高畑】その前にまず、基本として小学校ぐらいの時に、こういうのを使って色々作るっていうのは要る気がします。

【他故】必要だよね。

【高畑】それこそ、ニトリに行けば、組み立てなくてもいい家具がもう世の中にはあるわけですけど。でも、自分で好きなサイズのものを作るっていうのがね。

【きだて】ちょうど隙間に入る棚とか作れた時の感動っていうのはね、やっぱ大事なんですよ。

【他故】そういうことができる、っていうことが分かる非常に豊かな発想になるよね。

【高畑】学園祭とかさ、あと大人になってからでも、イベントとかやる時に無茶なもの作ろうとする人が出てくるじゃない。「おい、それ無理だよ」みたいな(笑)。「その計画図は無理」みたいなのを書く人がいるので。だから、家庭科とか図画工作って案外大事なんだよ。基本的な、ガスコンロの使い方とかとおなじでさ、それぐらいは知っておく必要があるよね。

【きだて】ねえ。

【高畑】ということで、これ1冊使って何かを作ると、結構鍛えられますよ。

【他故】1日1工作とかやったら、めちゃくちゃ鍛えられそうだよ。

【きだて】あ、面白いかもよ。

――まあ、他故さんもぜひこれで工作デビューを。

【他故】えっ今から? いや、もちろんこうやって入手したので。そういえば箱とか欲しいなってずっと思いながら話をしてたので、やってみたいですね。

――ぜひやってください。

【高畑】子どもの頃からちゃんと触れてもらう、リアルにそういう世界に触れてもらうっていうことを、せっかくグッドデザイン賞を取ったんだから、もっとみんなにやってほしいよね。

【他故】それはそうだ。

【きだて】そうだ。ひとつ言っておくの忘れた。このノートを使っていると、ふとした瞬間に「表紙と裏表紙がめっちゃ分厚くて使いやすそう」って気付くんだよ。工作の素材として。

【高畑】ああ、分かる。ここ切って使いたくなるよね。

【きだて】だから、できればこの表紙・裏表紙にも全面方眼を入れてほしかったな、と。

【高畑】確かに。

【他故】この用紙は良い用紙だわ。

【きだて】これ硬いので、絶対何か使いたくなるはずなんだよ。

【高畑】それ大事。これはこれで便利なんだけど、これじゃ強さが足りないときは、こっちを使うっていう。

【きだて】そうそう。

【高畑】ここに方眼が入ってるとよかったね。

【きだて】そう。表2、表3には入れてもよかったんじゃない。

【他故】なるほど。

【きだて】それはちょっとね、使っててそう思った。それを最後に言っておこう。

【他故】素晴らしい。

――表紙の方が紙が厚いんですね。

【他故】分厚いです。

【高畑】硬いからね。これを捨てるのもったいないよね。これは使わないとダメだと思う。

【他故】分かる。

【きだて】多分、相当折りにくいとは思うんだけど、でも使える。

【高畑】先に定規とかでギギギって折り目をつけてねから使えば。

【他故】素晴らしい。

【高畑】今回は、グッドデザイン賞に「まだやれるところがあるぞ」っていう提案をね。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】まだデザインできるぜっていう。

【他故】まだいけるぞっていうね。

【きだて】そう、俺たちに聞いてくれればっていう。

【高畑】本当ね、きだてさんのはド正論だと思う。

【他故】素晴らしい。

【高畑】これ捨てたら意味ないよね。

【他故】もったいない。

【きだて】ノートなんだし。

【高畑】良いこと言うな。

【他故】うん、さすがだ

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配信元: 文具のとびら

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