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東大専門塾に通う子どもが「学校の授業を聞かない」理由。「1日勉強だけで自由時間ゼロになる」加熱する受験戦争の最前線

東大専門塾に通う子どもが「学校の授業を聞かない」理由。「1日勉強だけで自由時間ゼロになる」加熱する受験戦争の最前線

―[貧困東大生・布施川天馬]―

 みなさんは「鉄緑会」をご存じでしょうか。

 東大専門塾を掲げるこの会は、指定校としてリストアップされた有名進学校の学生のみを原則として受け入れる、徹底的な精鋭指導に特化した進学塾。

 東大合格率は異例の50%以上とも言われており、ほとんどの東大生はこの会のお世話になっています。

 東大入学後のオリエンテーションでも「はじめまして!」の挨拶がなかなか聞こえてこないのは、「都内進学校出身の子の多くは鉄緑会で知り合っているから」首都圏エリートネットワークと「それ以外」との人脈格差が浮き彫りになる瞬間です。

 鉄緑会には、「通塾生のほとんどが学校の授業を無視して塾の課題を進める」という“あるある”が存在します。中には「体育など実技科目以外全ての授業を聞いた覚えがない」とまで言ってのけた方も。

 なぜ、進学校に通う子どもたちは、念願の授業を無視して塾の課題に夢中になってしまうのか。そこには、コスパと教養の対立が見えました。

 鉄緑会OB・OGに聞いて分かった「日本の進学事情の最前線」をお伝えします。

Nさん
Nさん

◆塾の課題が多すぎて“内職”は必須

「東大に何十人も合格するような進学校の授業って、すごく面白くてためになるものだとみなさん思われますよね。

 でも、実際にはすごく『つまらない』んです。私以外のみんなもそう感じていたと思いますよ。

 だって、みんな寝たり、ゲームしたり、マンガを読んだり、スマホをいじったり……その中で見れば、『塾の課題を進める』って大分マシな選択肢ですよね」

 今回お話を伺ったNさん(仮名・24歳)は、国立大学の医学部に通う鉄緑会OB。中学受験で鉄緑会指定校のひとつに合格し、中学2年生から鉄緑会に入塾されました。

 理Ⅲ合格者をして「内職(授業中にこっそり授業外の課題を進める行為)しないと終わらない」と言わしめる宿題をこなした生徒たちは畏敬を込めて「鉄緑戦士」と呼ばれます。

 私は2025年春に東大理Ⅲ(東大医学部直通コース)に合格された方18名に取材し、うち11名の「鉄緑戦士」と接触しました。

 理Ⅲ生といえば「宇宙人」とも呼ばれる異次元の能力を持つ存在ですが、そんな彼らも11人中8人が「内職しないと課題が終わらない」そうでした。

◆学校の授業は「鉄緑でやった内容」

 ただ、Nさんによれば、これはある種大げさにした言い方だといいます。

 鉄緑会では高校二年生から課題が激増しますが、「内職しないと終わらない」というよりも、「内職しないと、1日中勉強だけで自由時間を持てない」のだとか。

 そこで重要になるのが、「時間の捻出方法」。多くの方は、「朝早く起きる/夜遅くまで起きる」「自由時間を削る」などを思い浮かべるのでは。ただ、「鉄緑戦士」の多くは、授業時間を塾の課題にあてることへためらいません。それは、授業がつまらなすぎるから。

「つまらない」理由は、主に2つあります。1つ目は、「鉄緑会でやった内容だから」。

 鉄緑会では、高校範囲までの数学(数Ⅲを除く)と英語を、中3までにすべて学び終える異常な速度の先取り学習を行います。授業を聞いても、「塾でやった話」が繰り返されるだけなら、聞く意味がない。

 もうひとつの理由は、「受験と関係がない話だから」。

 これは主に国語や社会科などで起こるそうですが、東大に数十人以上が安定して合格するような有名進学校だと、授業内容が逆に緩くなります。

 受験に使う最低限の内容から逸脱して、時事ネタを題材にしたり、大学以降で扱うような研究的な内容に手を出したり……。

 こういった授業は、生徒たちの知的好奇心を充足させますが、「東大に受かる」が至上命題になっている生徒たちには、「テストに出ないことばかり扱う無価値な講義」と移ります。


配信元: 日刊SPA!

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