男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
—あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?
誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。
さて、今週の質問【Q】は?
▶前回:仕事が忙しい彼氏と上手に付き合うには?労いの言葉だけでは不十分、男が求めているのは…
こんなことが、あるのだろうか。いや、あってはならない。
「哲也さん、ごめんなさい。この結婚の話、なかったことにしていただけませんか…」
「怜さん、何をおっしゃっているのか…」
結婚相談所を介して知り合った怜。
そこらの食事会で知り合ったわけではないし、軽い気持ちで婚約したわけではない。そもそも相談所まで入会していたほど、お互いに結婚に対して真剣だったはず。
しかも怜は、早く結婚したがっていた。
それなのに、一度決まった婚約を破棄するとはどういうことなのだろうか。
「そんなこと、許されません」
「わかってます。なのですが…本当に、ごめんなさい」
結局、怜がひたすら謝り、僕たちの婚約は破談になってしまった。
Q1:女がすぐに交際をOKした理由は?
怜と知り合ったのは、結婚相談所だった。
今年で40歳になる僕は、結婚を焦っていた。周囲のほとんどが結婚をしており、出会いもない。マッチングアプリもやってみたものの、なかなかいい出会いに巡り会えなかった。
そんな中、友人から“最後の砦”として、結婚相談所を勧められた。
実際に相談所に入会すると、想像以上にお見合いの件数が多くて驚いた。
しかし5人ほどに会ったものの、ピンと来る人には会えなかった。
「どうしようかな」と思っていたタイミングでお見合いしたのが怜だった。
今年で31歳になる怜は、一橋大学卒業で大手メーカー勤務。実家は長野県で、長女。プロフィールは完璧だった。
「ぜひ、お会いしたいです」
僕の方から申し込みをし、会うことになった。場所は六本木にある外資系ホテルのカフェにしたのだが、10分前には到着した。
すると、まだ約束の5分前なのにやってきた怜。時間に誠実な感じや、僕の方へ向かってくる彼女の姿を見て、何かが始まる予感がした。
「初めまして、怜です」
「初めまして、哲也です」
怜が来たので、立ってお辞儀をする。すると、怜は少し見上げながら、僕に向かって微笑んだ。
「身長、お高いんですね」
「そうなんですよ。無駄に185cmもありまして」
「羨ましいです」
とはいえ、怜も160cmくらいはあるだろう。
「とりあえず、座りますか。何を飲まれますか?」
「じゃあ…カフェラテをいただきます」
二人の間に、静かにカフェラテの湯気が立つ。
何度経験しても、この初お見合いの瞬間は気まずい。
すると怜も同じことを思っていたのか、僕の気持ちを代弁してくれたかのように微笑んだ。
「何を話せば良いか、迷っちゃいますよね。気軽にお願いします」
怜は清楚な雰囲気が魅力的で、笑った時にエクボができるのが印象的な、綺麗な人だった。
「怜さんのお勤め先は、どの辺りですか?」
「私は日本橋です。哲也さんは?」
「日本橋、いい所ですよね。僕は大手町です」
「そうなんですね。近からず遠からず…という感じですね」
最初、おとなしい感じの女性かと思ったけれど、笑顔でたくさん話してくれる。おかげで、初対面なのにとても会話がスムーズにいく。
「じゃあ哲也さんは、大学は京都だったんですね」
「そうなんです。京都は、行かれたことありますか?」
「実は20代の頃、転勤で2年間大阪に住んでいたことがあって、その時によく京都へ行っていたんです」
「え!じゃあ関西、お詳しいんですね」
話していると、共通点が多いことがわかった。
あっという間に時間が過ぎてしまい、1時間のお茶タイムが終わりに近づいてきた。
「怜さん、他も何人か進められていますか?」
結婚相談所は、「仮交際」といって何人か並行してお見合い…つまり、デートができる。しかし「本交際」へ進むと、相手は一人に絞らなければならない。
今日が初対面だけれど、「怜が他の人とデートをするのは嫌だな」と純粋に思った。
「実は…はい…」
「ですよね、怜さんモテそうですし。ただ、僕は本交際へ進められたら嬉しいなと思っています」
「え?仮交際もせずにですか?」
2、3回会って、仮交際を経てから、本交際へと進めるのが通常のパターンだ。でも僕の中では怜と交際に進みたい気持ちは決まっていた。
「ただもちろん、焦らずにゆっくり考えてください。怜さんのお気持ちが優先なので」
「わかりました…。哲也さん、ありがとうございます!」
そしてこの解散後、結婚相談所を介して正式に“本交際へ進む”との連絡が来た。
Q2:女が婚約破棄をした理由は?
仮交際をすっ飛ばして始まった、僕たちの真剣交際。ただもちろん、ここで合わなかったら成婚には至らない。
なので何度かデートを繰り返しながら、お互いの将来像を擦り合わせた。
「哲也さん、結婚したら子どもは欲しいですか?」
「はい。2人くらい欲しいですね。怜さんは?」
「私は1人でいいかなと思っています」
「そうですか…」
「あ、でももちろんそれはタイミングとか、神様のみが知るというか…。とりあえず早く結婚したいと思っています。早ければ早いほどいいですね」
「そうですよね」
子どもが欲しいこともわかったし、お互いに結婚願望もある。そもそも、結婚相談所に入っている時点で高いお金を払っているし、結婚に対する本気度が違う。
「怜さんは、どうして結婚相談所に入会されたんですか?プライベートでも、出会いとか多そうなのに」
「ちゃんとした相手が良くて…。結婚相談所だと、お相手の学歴とか家柄とかも、クリアに見れるので」
結婚相談所には、厳正な審査がある。家柄や学歴などはもちろん、未婚かどうかも当然ながら証明されている。
「わかります。そこは大事ですよね。僕も、相手は家柄が大事だと思っていて。すごく裕福でなくても良いのですが、僕の稼ぎに寄生するような家柄は嫌だなと」
怜の家庭は、とてもちゃんとしている。その点は安心感は大きい。
そして何よりも、お互いに結婚というゴールは同じ。
ダラダラと交際を続ける理由は何もなかった。
「ちなみに、結婚後も怜さんはお仕事を続けられるんですか?」
「はい、そのつもりです。ダブルインカムの方がいいなと思っていて」
「それは大事ですよね」
加えて、怜はとてもしっかりしていた。真面目だし、浮気の心配などもない。なので迷う理由はどこにもなく、僕はすぐにプロポーズをした。
「怜さん。僕と結婚してください」
もちろん、怜からの返事はYESで、僕たちは無事に婚約となった。あまりにも順調で、怖いほどだった。
「本当ですか?じゃあ僕たち、結婚相談所を退会しないとですね」
「そうですね。嬉しい限りです」
まさかこんなにも上手く、とんとん拍子に進むとは思ってもいなかった。しかしそれと同時に、ふと思うこともある。
システム的に、成婚となると“成婚料”というものを支払うことになる。それはそれぞれが登録している相談所に支払わなくてはならない。
「でも、成婚料を払うのってなんかもったいないですよね。怜さんのところは成婚料いくらですか?」
「え、20万円くらいですけど…。でも相談所のおかげで私たち知り合ったわけですし、むしろ安いなって感じてます」
「その分を、二人の結婚式費用とかに回せたらなって思っちゃいますね…」
「そうですか」
こうして、僕たちはめでたく婚約に至ったはずだった。
しかし結果として、急に怜はこの婚約を無しにしたい、と言い出してきた。
― 結論を急ぐのが早過ぎたから?それとも、実は他に好きな人がいた…?
結婚することが、いつからこんなにも難しい時代になってしまったのだろうか…。
▶前回:仕事が忙しい彼氏と上手に付き合うには?労いの言葉だけでは不十分、男が求めているのは…
▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
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女が土壇場で婚約を破棄した理由は?

