『キャバクラ店員へとへと裏日記』(鉄人社)の著者である御厨謙氏(63歳・独身)は、認知症の母親のため7年間の介護離職と連戦連敗の転職活動の期間を経て、48歳でデリヘルドライバーの仕事にありついたという。
その後、セクキャバ・キャバクラの男性従業員に転身し、現在も水商売関係で働いているという同氏だが、今回は夜の世界で長く働き続けられた理由を聞いた。
◆「スケベ心を出さず、真面目に働くのが一番」

御厨:ちなみに通行人を追いかけると“客引き”。私の仕事は「いかがですか〜? 楽しいですよ〜!」とか言って、道行く人に立ち止まってもらう“声かけ”の仕事です。気がつけば、キャバクラでの仕事が人生で一番長続きしている仕事になりました。
――夜のお店で長く働き続ける上で大切なことはありますか。
御厨:変にスケベ心を出さず、真面目に働けば大丈夫です。僕はどんな仕事でも遅刻しないように、必ず1時間前にはお店や近くで待機するようにしています。周りがけっこうテキトーなので、余計しっかり者に見られますよ。
――今回のインタビューにも1時間前には編集部に到着されていて驚きました。お店の女性と恋愛関係になったこともないんですか?
御厨:デリヘルドライバーの頃に、女の子に手を出したドライバーの末路を実際に目にしたこともあり、僕自身は『風紀』(*業界用語で、男性従業員がお店の女の子に手を出すこと)を乱したことは一度もありません。バレると裏商売らしい独自ルールで容赦なく罰金を取り立てられます。僕の自宅にはキャバ嬢がよく泊まりに来ていましたが、そもそも女の子から異性として見られないことも当然あると思いますね。
――さらっとスゴいことを言いますね(苦笑)。若い男性にはない安心感や包容力が御厨さんにはあるのかもしれません。
御厨:風紀違反の心配も基本ないし、女の子とも仲が良いので、お店からも重宝されていたみたいです。デリヘルでもキャバクラでも、マネージャーの人間は実際に働く女の子の様子がよくわからないので、現場の男性従業員からの情報を常に求めているんですね。
――それにしても自宅に泊まりに来るって、キャバ嬢の扱いが手慣れすぎているような……。
御厨:よく夜食代わりに手料理をお店で振る舞っていたんですが、これがけっこう評判で。みんなごはんを食べに来るんです。200種類ぐらいレパートリーがあるので、基本的にリクエストがあれば何でも作っていました。
――結局、胃袋を掴んだと。
御厨:タダでおじさんの家まで来るわけないじゃないですか。
◆キャバクラにもインバウンドの波が…
――キャバクラに行く若い男性客は減っていると思いますが、業界の景気感はどんな感じなんですか。
御厨:歌舞伎町はキャッチが外国人観光客を引っ張ってくることが増えましたね。僕が働き始めた頃は本当に日本人のお客さん以外は入店させていませんでしたが、やはり日本人よりお金持っている外国人観光客も多いので。
――外国人観光客も来るんですね。キャバクラの場合、言葉の壁がありそうですけど。
御厨:日本に何回も観光へ来ている人など、日本語が少しできるような観光客は日本人の女の子と喋りたいということで、けっこう来店します。キャバ嬢の中には中国にルーツがあって中国語も日本語もできる子もいますし。
――キャバクラ初心者が優良店を見分ける方法はありますか?
御厨:難しいですね。最初は無料紹介所を使うのが一番良いです。万一のことがあってもクレーム入れられますし、評判に関わるので話を盛るようなこともしません。ただ、歌舞伎町のキャッチは基本的に信用してはダメです。私は顔見知りのキャッチも多いので、キャバクラ行きたいという友人といるときにキャッチから紹介してもらうこともありましたが。
――現役キャッチが言うんだから間違いないですね。いまはプライベートでキャバクラへよく遊び行くんですか?
御厨:歌舞伎町のキャバクラを辞めてから何回かキャバクラで遊んだこともあります。ここ1年ぐらいは行っていないですけど。ワンタイムで料金交渉して。「女の子にドリンク1杯だけ出すけど、僕はお酒が飲めないからフリードリンクサービスしてね」という感じです。
――小慣れたもんですね(笑)。
御厨:客として遊んでみると、悪い気持ちはしないもんですよ。

