【事例】名義株主問題によりM&Aが不成立となったケース
ある地方の建設会社では、創業当時に7名の発起人を形式的に立てて設立したまま、株主名義整理を怠っていました。
創業者の死後、相続人の一部が行方不明となり、株式の帰属関係が不明確なままM&A交渉が進みました。
当初は大手建設グループが高値での買収を打診していましたが、買主は「実質株主が後から登場するおそれが高い」と判断し、最終段階で撤退。その後、他の買主候補も現れず、M&Aは実現せずに終了しました。
名義株主問題は、M&Aを根本から不成立にさせる構造的リスク
名義株主問題は、単なる形式上の不備ではなく、M&Aを根本から不成立にさせる構造的リスクです。その解消には膨大な時間と交渉コストが必要であり、しかも完全な解決が保証されるわけではありません。
買主は一定のリスクを負う覚悟が求められますが、そのリスクを受け入れられる買主は多くはありません。
次回は、この名義株主問題がさらに進行し、株主自身が経営方針や譲渡に反対してM&Aを阻害する構造、すなわち「敵対的少数株主によるM&A阻害トラブル」について解説します。
弁護士法人M&A総合法律事務所 代表弁護士
土屋 勝裕
