高齢親の「老い」を感じたら…まずは“暮らしとお金”、3つの対策を
もし自分の親をみていて、「精神的に弱くなっているのかも?」と思ったとき、家族としてはどのようなことをすべきでしょうか。FPとしての経験から、最初に整えるべきと考えるのは、以下の3つです。
1.大きなお金の判断は“保留”にする
気持ちが落ち込んでいるときは、判断力が鈍りがちです。早く楽になることだけを考えてしまい、視野が狭くなり、短絡的な思考に陥ってしまうことも。たとえば、下記のような大きなお金の決断には注意が必要です。
- 住み替え
- 長年続けてきた保険の解約や運用資産の売却
- 高額なお買い物
- 長期的な契約となるサブスク契約の乗り換え
こうした“大きな判断”は保留とし、あらかじめ「まず〇〇に相談する」と、家族内でルール化しておくと安心でしょう。必要に応じて、専門家の力も借りると安心です。
2.お金の流れを“できるだけシンプル”にする
日々の定期的な支払いにも注意が必要です。お金の流れが複雑になりすぎていないでしょうか。たとえば下記のような状態に心当たりがあれば黄色信号です。
- 年金の振込口座と光熱費や通信料などの引き落とし口座がバラバラ
- 複数の銀行口座を使い分けている
- クレジットカードを日常的に利用している
- 支払いが必要な税金がある
- レンタルしているものがある
こうした複雑さは、将来のトラブルにつながることもあります。事前に下記のような対策を行っておきましょう。
〇主要な支払いを同じ口座に集約する
〇使っていない銀行口座やカードは解約する
〇年間の支払いスケジュールを把握する
〇契約状況を確認する
3.家計を“ざっくり見える化”する
家計管理といえば「家計簿」をイメージする人が多いと思いますが、家計管理に必ずしも家計簿は必要ありません。家計簿をつけるには、細かな追跡作業を伴います。長年続けてきた人でなければ、年を重ねてから、ましてや精神状態が弱くなってしまっている状態では難しいでしょう。そこでおすすめなのが、「使えるお金を確認する作業」です。家族が代わって行うこともできます。
〇記帳し、すべての収入を確認する
〇通帳や請求書などから固定支出を把握し、年ベースで計算する
〇これから必要な大きなお金の予定(入院費用や施設入居費用・住宅修繕費用など)を確認する
最終的に、相続手続きなどの負担を減らすことにもつながります。
「年だから仕方ない」ではなく、“暮らしの土台”を整える
高齢の親の変化をみたとき、「年だから仕方ないのかな」と思ってしまいがちですが、気力の低下は暮らしとお金のトラブルにつながりやすいものです。
医療機関にかかり、医療からのサポートを受けることはもちろん大切ですが、それと同時に生活がこれ以上崩れないよう“土台”を整えることも重要になります。
親の心と暮らしが揺れているとき、家族ができる最も大切なサポートは、“未来の選択肢を残しておくこと”なのかもしれません。「最近ちょっと気になるな」と感じたときこそ、無理のない範囲で整えていくことが、親自身の生活の安心にも、家族の安心にもつながっていくはずです。
内田 英子
FPオフィスツクル代表
