◆なぜか“現場”でカメラが撮れていない


「部屋で孤独死が起きた現場だったのですが、YouTubeの撮影許可が取れて、カメラを持って入ることができたんです。撮影を許可してもらえる現場っていうのはなかなか珍しく、許可をもらえた場合は撮影の際に必ず録画ボタンが押せているかどうかを何度もチェックします。
確かに録画ボタンが押せてることを確認し、清掃前の部屋を練り歩きました。カメラは2台使っていて、悲惨な現場の撮影をします。一通り撮り終わってカメラの素材を後日チェックしたところ、孤独死現場になった部屋の様子だけ、カメラ2台ともちゃんと映っていなかったんです。首にかけていたアクションカメラも一度回すと4時間くらいは撮影できるはずなのに、現場の部屋に入った途端に、録画が終了してしまっていたんです。
なぜか、オープニングとクロージングトークは撮れていたのも不思議でした。何者かが、部屋に入った瞬間に録画ボタンを止めて、外に出た途端、再度録画ボタンを押したかのような…」
◆「この電話番号は使われておりません」
また、悲しい出来事もあった。「依頼主のお母様が亡くなったので、遺品整理をしたいとの依頼がありました。行政書士さんからのご紹介の案件でした。結構な広さの家で片付けには数日かかりました。終わったので依頼主に連絡し、立ち会ってもらいました。その際、『自分の家も片付けたいので引き続き依頼をしてもいいですか?明日連絡しますね』と言われました。ですが、しばらく経っても電話がこないので、心配になって連絡をしたところ『この電話番号は使われておりません』というアナウンスが……心配になり、行政書士さんに連絡をしてみました」
そこで、行政書士さんから驚く言葉を言われたと言う。
「実はあの遺品整理案件の翌日に亡くなった、と伝えられました。母親が亡くなったことによりメンタルが不安定になって、突然、自死を決めてしまったのか、もともと母親が亡くなった時点で遺品整理が終わったらこの世を去ることを決めていたのかどうかはわかりません。弊社としては、関わったお客様や依頼主の方に安心を届けるために、なるべく喜んでもらおうと色々なサービスを提供していこうと思っています。その方にも、今後の人生についてなど、色々とやりとりをして関係性を作っていたつもりだったのですが、その方には理念を届けることができなかったのだと思います。かなり無念な一件でした」
<取材・文/山崎尚哉>
【特殊清掃王すーさん】
(公社)日本ペストコントロール協会認証技能師。1992年、東京都大田区生まれ。地元の進学校を卒業後、様々な業種を経験し、孤独死・災害現場復旧のリーディングカンパニーである「ブルークリーン」の創業に参画。これまで官公庁から五つ星ホテルまで、さまざまな取引先から依頼を受け、現場作業を実施した経験を基に、YouTubeチャンネル「BLUE CLEAN【公式】」にて特殊清掃現場のリアルを配信中!趣味はプロレス観戦

