自由に生きた代償
恋愛や離婚を何度繰り返しても、それ自体に問題はなく、自由に生きる人生は個人の価値観の選択でしょう。ただし、それを選ぶには、「自分の生活を自分で守る力」が必要です。
しのぶさんはずっと個人事業主として働いてきましたが、老後の年金は国民年金の月6万円のみ。定年退職がないとはいえ、いずれは働けなくなる日が来ることはわかっていたはずです。若いころから好きな仕事をしてきましたが、常に誰かに生活を支えてもらうことに慣れ、自立して生活する努力を後回しにしてきました。
本業の稼ぎが少ないなら副業で収入を増やす、あるいは、個人事業主が使える「小規模企業共済」や「国民年金基金」などの制度を利用して、税金もお得に老後資金を作ることもできたはずです。また、現役で働けるうちは年金を受け取らず、75歳まで繰下げ受給をすれば、受給額を最大84%増やすことも可能でした。そうした対策をしていれば、少なくとも経済的な面では、もっと心にゆとりのある生活を送れたことでしょう。
自由な生き方を選ぶための戦略
厚労省「令和5年度年金受給状況調査」によると、国民年金のみの女性の平均受給額は月額5.6万円前後というデータがあります。会社員として厚生年金を受け取っても生活費を賄うには難しい金額の人も多いですが、ずっと個人事業主だった人にとっては、さらに厳しい現実が待っています。
しのぶさんのように自由な生き方を選び、何度もパートナーを変える人生も一つの選択です。しかし、自由な生き方を選ぶからこそ、誰かに依存せず自立した生活を送るための「戦略」が不可欠です。自分らしく生きるためには、まず自分一人でも生きていける経済的な基盤を整えておくことが、なによりの防御策となるのです。
小川 洋平
FP相談ねっと
ファイナンシャルプランナー
