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先進国のなかで一人負け…“名目GDPが28年間でマイナス24%”の日本、「国内生産」より「海外投資」に注力し過ぎた末の悲劇

先進国のなかで一人負け…“名目GDPが28年間でマイナス24%”の日本、「国内生産」より「海外投資」に注力し過ぎた末の悲劇

国内生産にではなく、海外投資に力を入れた日本

[図表2]貿易収支と経常収支の日独比較


次に図表2の貿易収支(輸出􃿌輸入)と経常収支を見てみよう。ここに日本とドイツの産業構造・産業組織の違いが典型的に表れている。日本は、かつてものづくりの国ではあったが、じつはドイツほどに強力かつ大々的に輸出する力量はなかったのである。そのことを、かつてプラスだった日本の貿易収支が、大幅にマイナスになっていることが表している。逆に、ドイツは貿易収支のプラスを大幅に拡大させている。

逆に増えたのが、経常収支の黒字である。巨額の貿易赤字を補ってなお余りあるほど、海外投資によって得た利益を国内に送金する金額が増えたのだ。日本の企業は、海外に投資し、稼いだ金を日本の本社に送金する体質に変わっていった。

その反対に国内では投資を抑え、人件費を抑えるという構造に変化した。それでは国内に雇用は生まれず、賃金も上がらないし、再投資も行われない。国内消費は冷え、GDPは増えない。GDPの主要構成要因のうち「国内消費」「投資」「貿易収支」の3要素が失速したのである。

1社だけなら「利潤最大化」という経済学上適切な行動かもしれないが、それを多くの企業が同時に行ったため「合成の誤謬(ごびゅう)」が発生し、日本国内は、「デフレスパイラル」に陥った。

一方、ドイツは輸出を継続的に増やし、貿易によって大きな額を稼いできた。貿易収支の急増ぶりがそれを物語っている。経常収支の黒字額も増えているが、ドイツの強さは輸出によって得られたものと言っていいだろう。

国内に投資して、できた製品を輸出に回すと、国内に雇用が生まれ、賃金が増え、国内消費を拡大させ、それがGDPの増加へとつながっていく。いわゆる「プラスの連鎖」であり、これが通常の健全な経済成長のパターンである。

失業率の優等生ドイツは「若者がきちんと就職できる国」 

図表3が示すように、ドイツは就業者数も大きく増えている。28年間の伸び率で比べても、日本はプラス4.5%でドイツはプラス20.4%と大きく違う。ここにも、輸出によって得た付加価値が、国内において雇用を生み出している様子が見て取れる。
 

[図表3]就業者数の日独比較


失業率については、ドイツは1990年に東西統一が行われ、2005年には11%まで悪化したが、その後、経済力の回復に伴って急速に改善し、2023年には3%にまで下がっている。

欧州主要国の若年層および全体の失業率(2025年1月)では、ドイツは欧州の中でも特に低く、ユーロ圏の失業率は6.2%、若年失業率は14.1%だが、ドイツはそれぞれ3.5%、6.4%となっている。ドイツは若者層の失業率が低い。

若者の就職口がなくて、若者が街をぶらぶらしている社会はすさんでいる。その点から言えば、若者がきちんと就職できるドイツは幸せな国と言える。輸出によって得た付加価値により、若者に就職口が確保されているのである。

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