深刻化する「老老介護」の実態
内閣府「令和6年版高齢社会白書」によると、平成23(2011)年度以降、65歳以上の要介護者数は右肩上がりに増加し、令和3年度には676.6万人にのぼっています。
また、介護を担っているのは「同居の家族」がもっとも多く、介護者の年齢は男女ともに7割以上が60歳以上であることもわかっています。いわゆる「老老介護」が常態化しているのが現状です。
また、介護に要する時間は、要介護度が高い人ほど長く、「要介護4以上」の人を介護する人のうち、4割超が「終日介護を行っている」と答えています。また、介護や看護を理由とした離職率は、男性よりも女性が高いようです。
こうしたなか、介護保険サービスの利用が推進されているものの、地域によっては需要と供給がマッチせず、満足なサービスが受けられない傾向にあります。金銭的な余裕があれば「介護付き有料老人ホーム」といった高齢者施設への入所が視野に入るでしょう。しかし、比較的安価に利用できる「特別養護老人ホーム」などの公的施設は人気で待機者が多く、入居にはハードルが高いのが現状です。
高齢者が直面する深刻な「介護格差」問題
さらに、居住地によって「介護サービス」に深刻な格差が生じているようです。全国の65歳以上人口10万人当たりの介護従事者数や介護施設数は、地域により大きなバラツキがあります。
例として、特別養護老人ホームの稼働状況を見てみると、半数近くの市町村が基本的にすべての施設で満員であると回答している一方で、一部の市町村は「施設や時期によっては空きがある」と回答しており、介護が受けられる環境に格差があることがわかります。
[図表]市町村における特別養護老人ホームの稼働状況 出所:厚生労働省「令和4年度老人保健増進等事業 特別養護老人ホームの入所申込者の実態把握に関する調査研究」
また、介護従事者数にも地域差があり、人手不足により「受けたい介護を受けられない」という地域が存在しています。
「情報」や「人」とつながることが、解決の糸口に
介護に悩む人物が老老介護の末、悲しい事件を起こしてしまうケースも後を絶ちません。
最悪の事態を回避するためには、親や自分に介護が必要になったときにどのような選択肢があるのかを、あらかじめ調べておく、あるいは、いざというときの助けとなる行政の相談先を知っておくことが、親と自分両方の身を守ることにつながります。
山﨑 裕佳子
FP事務所MIRAI
代表
