
老後生活を支えるはずの、2つの大きな柱「年金」と「退職金」。年金はねんきん定期便に書かれた“見込額”を、退職金は“会社の制度”を、それぞれ信じて「老後は安泰だ」と考えてはいないでしょうか。しかし、その「年金見込額」は今後の収入減で目減りするリスクがあり、さらに「退職金」の平均支給額はこの26年で1,000万円も激減しています。獅子にひれ氏の著書『定年が気になりはじめた50代おひとりさま女子たちのトリセツ』(ごきげんビジネス出版)より、老後の2大資産の厳しい現実と、今からできる備えを解説します。
年金の額、知っていますか?
自分がどれくらいの年金を受け取れるかを知るには、誕生月に毎年届く「ねんきん定期便」で確認できます。
50歳未満の人に対しては「これまでの加入実績に応じた年金額」が表示されています(【年金定期便(はがき)/50歳未満の方】点線枠内)。ここに書いてある金額は、現在の年金受給者がもらっている金額がベースです。50歳以上60歳未満の人には「現在の加入条件が60歳まで続いた場合の年金見込額」が表示されています。
[図表1]ねんきん定期便(ハガキ)/50歳未満の方 出典:日本年金機構ホームページ「ねんきんネット」
50歳以上の人の「ねんきん定期便」の表面、左の点線枠箇所は65歳から受給する場合、右の点線枠は受給を70歳まで遅らせた場合のそれぞれの年金見込額です。65歳受給と比較すると42%増額となっています。これは5年間年利8%で運用したときに得られる収益と同じです。受け取り時期を遅らせるメリットを感じます。裏面の点線枠箇所には65歳受給の見込額が記載されています。
[図表2]ねんきん定期便(ハガキ)/50歳以上の方 出典:日本年金機構ホームページ「ねんきんネット」
記載金額はあくまでも現在の収入などがそのまま続いた場合の試算額です。仮に役職定年を迎えるなどして収入が減ると、納める年金保険料もそれだけ少なくなります。それに伴い、将来受け取る年金も減ることになります。
現在は定年退職の年齢が65歳まで引き上げられ、60歳以降も働く女性が増えてきました。60歳以降も会社員を続けた場合、厚生年金保険料を支払うことになります。より詳しくシミュレーションしたい方は、日本年金機構の「ねんきんネット」で確認できます。
退職金の額、知っていますか?
ある日のこと「住宅ローンを完済して悠々自適の老後のつもりが、退職金が思いのほか少なくて……」と上場企業に勤める男性が困惑している様子をニュースで見ました。あなたは自分の退職金がいくらあるか知っているでしょうか? 特定非営利活動法人 日本ファイナンシャル・プランナーズ協会(日本FP協会)によると「世代別比較くらしとお金に関する調査2018」では、2人に1人は金額を知らないという結果に。
では実際どのくらい退職金があるのでしょうか。厚生労働省の「就労条件総合調査」によると、管理・事務・技術職に就く大卒以上の定年退職者の退職金平均支給額は、1997年は2871万円だったのに対し、2023年は1896万円まで減っています。26年ほどの間に1千万円も退職金が減っているのです。従来の「確定給付企業年金(DB)」と呼ばれる制度から、iDeCoの企業版である「企業型確定拠出年金(企業型DC)」への移行や定年後再雇用の人件費補填などが背景になっています。
なお、退職金の割り増しなどが条件となる早期退職による退職金は、2023年には2266万円になっています。従来の「定年まで働き続ける」という価値観から「早めの退職で第二の人生を楽しむ」という考え方の人も多いようです。
退職金は長く企業に勤めたご褒美ではなく、給料の後払いです。「開けてびっくり」となる前に、一度確認してみてはいかがでしょうか。
〈参考〉
「ねんきんネット」
https://www.nenkin.go.jp/n_net/
日本年金機構ホームページ
https://www.nenkin.go.jp/service/nenkinkiroku/torikumi/teikibin/teikibin.html
獅子にひれ
ライター/AFP
※本記事は『定年が気になりはじめた50代おひとりさま女子たちのトリセツ』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
