◆チョコプラが犯した“最大の間違い”
では、表向きは格下であると断じているのに、なぜ素人の発信を気にしてしまうのか――‐。そこにあるのは、抑えきれない承認欲求です。これは芸能界のタレントに限った話ではありません。
かつて、批評家の浅田彰氏は、近頃の若手の思想家や書き手はSNSでの反応を気にしすぎだ、と指摘していました。著書や論文などを褒められたらすぐに飛びついて嬉しがるし、逆に批判されてもいちいちムキになって反論する。もっと超然としていなければいけないのに、ガキっぽい承認欲求を隠そうともしないことに呆れてしまう、という内容でした。
売れっ子芸人であるにもかかわらず、松尾駿が素人の“下界”に降りてきてしまったのも、結局は彼が見下しているはずの人たちからの承認を必要としていることの裏返しなのでしょう。そして、松尾自身がそれに対する自覚のないまま素人を格下に見たつもりでいることこそが、悲しく滑稽なのです。
つまり、彼らの意図したところとは違う形で、冷たく乾いた笑いが発生してしまったわけです。それはプロの芸人にとって、失言したこと以上の致命傷を負ったことを意味します。
チョコレートプラネットには、良い意味で素人を無視する覚悟と胆力に欠けていました。それが、最大の間違いなのです。
文/石黒隆之
【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

