◆大学で“九九の復習”?なぜそうなるのか
宮崎:議員としてこの問題を議論していた当時、ならうべきは何かというと、ドイツのマイスター制度的なものだ、と。早くから手に職をつけて、中学生ぐらいから職人とホワイトカラーの道を分けてやっていくような制度を作ろう、みたいな話が出ていましたね。

高橋さんはどうですか?
高橋:これ難しいですね。大学に行って色々勉強したほうがいいと思いつつ、みんながそうすべきのか。なんて言うんですっけ、Fラン? いわゆるFランの人たちが、僕の周りにいないから、わからないんだよね本当に。
海老原:いやらしい男だな(笑)。
高橋:いやらしい男だね(笑)。いま自分が悪人になりながら言いましたけど、官僚の人たちもわからないんだと思う。偏差値50以下とかの大学の実態がわからないから、僕は、悪だとも言い切れない。そこで何かを得ているんじゃないか?という気もするんですよ。
ただ、そういう大学に行くことが、就職とかを考えた時、コスパに合わないという議論はあるでしょうね。
海老原:下位の大学でやっているのは、リメディアルが基本なんですよ。
宮崎:リメディアルって何ですか?
海老原:学び直し。小・中・高校で基礎学力がついてない学生に、補修をする教育ですよ。例えば英語なら、ABCDから初めて、be動詞とか、aとanの使い方とか、そういう補修教育を大学でやってるんですよ。
◆海外では「義務教育での留年」がザラ
宮崎:その過程は、義務教育と高校で終えといてくれ、っていう話じゃないですか。海老原:そうなんです。
欧州をはじめとする海外ってね、義務教育でもどんどん落第・留年させるんですよ。例えば九九ができない、アルファベットが書けない、という人は留年になる。
15歳前後までに留年(repeat grade)を経験した生徒の率は、OECD平均で9.4%。例えばフランス10.8%、ドイツ19.2%、ベルギーは26.5%もいる(OECD PISA=学習到達度調査=2022)。
ところが、日本は義務教育での留年ゼロです。九九ができない子が、中学で代数を習って……と、理解しないままやっていくから、最後に大学で救わなきゃならない。

要するに、マイスター制度ってこういうことなんですよ。だから、ドイツは素晴らしいって話をされると、ちょっと違うんじゃないかなと思うんです。15歳分岐といって、働くか大学に行くかのキャリアが半強制的に早くに決まってしまう。

