◆それでも大学無償化で大卒を増やすべきなのか?
高橋:早いですよね。どっちがいいんだろう?日本は、落第がない制度が、ギスギスしない良い感じを醸し出しているかもしれないし。やっぱり僕は、21歳ぐらいで進路選択できる、日本の制度のほうが好きかな。
だって自分を思い出すと、15歳の時に、なりたい職業なんかなかったですよ。夢は広末涼子と付き合うことぐらいしかなかった(笑)。
海老原:じゃあシェフになればよかったじゃないですか(笑)。
あともう一つ問題なのは、日本の専門高校なんです。いまだに農業学科がある高校が296校、水産学科が42校と、すごく多い。今の時代は、ITとかCADとかが必要なのに、情報学科は28校しかない。
あと、縫い物とかを教える家庭学科が259校もあるのに、高齢化で重要になる看護学科って97校しかないんですよ(学校基本調査、令和6年)。
ITだとか看護とか、時代にあった職業高校を増やせば、就職もしやすいでしょ。無理に大学に行って、販売サービス職に就くよりいい、という人も出てきますよ。

海老原:それなのに、いま進んでる話は「大学無償化」ばっかりでしょ?「かわいそうだから、お金がない家庭の子も大学に行けるように」というのはわかるけど、これ以上、大卒を増やしてどうします? 仕事の受け皿もないですよ。
大学無償化の前にやるべきことはたくさんある、と僕は思う。
◆日本の大学が、勉強しなくても卒業できるわけ
高橋:それはそうですね。ただ一方で、“勉強もせずに4年間”というのは、下位大学の方々だけじゃないとも思うんですよ。僕は早稲田でしたけど、ほぼ麻雀してただけだもん。人のことは言えないな、と。まぁ合間に本は読みましたけどね。「商学部のやつはホント不真面目だな」とか思いながら、政経学部にいって麻雀してました。
宮崎:今ちょっと、マウント取られたんだけど(笑)。
海老原:日本の大学は、勉強しなくても卒業できますからねぇ。
でも、ヨーロッパ諸国は大学生の6~7割しかしか卒業できないんですよ。大学卒業率は、日本は91%、OECD平均は70%(※)。みなさん、なぜOECDが低いか、わかります?
会場:????
海老原:それは、大学がほぼ無料だからなんですよ。学生から授業料もらってなければ、ダメな学生はいくらでもクビ切れるんです。だから、北欧、フランス、ドイツのように大学授業料がほぼ無償の国は、卒業率が6~7割でも経営できるわけ。
国によって無償の範囲は少しずつ違うけれど、イギリス以外の欧州は無償が趨勢です。
ところが、日本のように授業料もらってると、学生にいてもらわなきゃ困るから、クビを切れない。
宮崎:なるほど経営上の問題ですね。
海老原:つまり、「日本も大学を無償化したら、そうなりますよ」ということも、ちゃんと伝えなきゃいけないんです(以下、後編につづく)。
※OECDの教育白書「Education at a Glance」2010、2013のCompletion Rate(大学入学者が学士を得て卒業する割合)。この年以降のデータは取られていない。
【海老原嗣生(えびはら・つぐお)】
雇用ジャーナリスト。サッチモ代表社員。大正大学表現学部客員教授。1964年東京生まれ。 大手メーカーを経て、リクルートエイブリック(現リクルートエージェント)入社。その後、リクルートワークス研究所にて雑誌「Works」編集長を務め、2008年にHRコンサルティング会社サッチモを立ち上げる。漫画 『エンゼルバンク――ドラゴン桜外伝』の主人公、海老沢康生のモデルでもある。人材・経営誌「HRmics」編集長、リクルートキャリアフェロー(特別研究員)。著書は30冊以上、近著『静かな退職という働き方』が話題沸騰中
<文/日刊SPA!編集部>

