
秋分を過ぎると、だんだんと夜が昼より長くなっていきます。実は、この秋の夜長をゆったりと過ごすことは、50代女性にとってとても大切な養生になるのです。特にほてり、のぼせ、不眠、乾燥などが気になる人は、ぜひ“秋の夜長養生”で心身を整えてみてください。
長い夜をくつろいで過ごすためのタイムスケジュール

一般的に50代女性の多くは「陰(いん)」が不足している傾向があります。陰とは東洋医学で体を潤す水分や血液のことをさし、陰が不足するとほてり、のぼせ、不眠、乾燥などの更年期によく見られる不調が起こりやすくなるのです。
そんな陰を補うのに適した季節が秋と冬。そして陰が生まれるのは夜の時間帯なので、秋の夜長は陰を補うのに最適なときなのです。
そこでまずは、夜の過ごし方を秋の夜長に合わせて少し見直してみませんか?
秋分の日没はだいたい17時半~18時半で、今後さらに日没が早くなっていきます。そのぶん、夏場よりも少し生活サイクルを前倒しにして夜のタイムスケジュールを組んでみるといいでしょう。
例えば、夕食の時間をいつもより30分ぐらい早めにします。18時台に食べられると理想的です。夕食を早くすませたほうが早めに消化活動が終わって胃腸が休まるため、夜の眠りがスムーズになります。夜遅い食事は胃腸に負担をかけ、眠りも妨げるので、少しでも早めに夕食をとれるように調整してみてください。なお、夕食は胃腸に負担がかからないように、温かくて消化にいい食事がベターです。
入浴は20〜21時頃に。40度前後のお湯に10〜15分ほどつかります。このとき長風呂をして汗をかきすぎると、陰を消耗してほてりやすくなるので注意して。入浴後は、薬膳茶で水分補給しつつリラックスしましょう。むくみやだるさが気になるならはと麦茶、ほてりやのぼせが気になるなら菊花茶、アンチエイジングなら黒豆茶を選んでみて。カフェインレスで甘くないので、夜遅い時間でも飲みやすいはず。薬膳茶を飲みながら、読書を楽しんでくつろぐのもいいですね。
22時になったら照明を少し暗くして、スマホはOFFにします。深呼吸やツボ押し、マッサージなどのセルフケアをしながらゆったりと眠気が訪れるのを待ち、23時までに就寝します。
⋯⋯というように、夜が長くなったぶん夕食を早くして、リラックスタイムを長くしたタイムスケジュールで過ごしてみてください。上記の通りでなくてもかまいませんが、就寝は23時を目安に。もし平日は難しいなら、休日だけでもいいので秋の夜長をゆったり過ごすといいでしょう。
もの悲しくなる秋の夜は「肺」の養生をしよう

秋はもの悲しくなる季節でもあります。東洋医学でも秋は「悲」の感情が強くなる季節とされていて、その悲の感情は五臓の「肺」と深く結びついていると考えられています。悲しい感情と肺に関係があるなんて、意外に思われるかもしれませんね。
例えば、ため息が多くなる、胸がつかえる、呼吸が浅くなる、声が小さくなる、涙もろくなるといった悲しいときに起こる体の変化は、肺が弱くなっているサインでもあります。確かに、呼吸や胸が関係するものが多いですね。ちなみに涙もろくなるのは、東洋医学では肺が水分代謝にも関わると考えられており、肺が弱くなるとその水分代謝が乱れるために起こる反応だと考えられます。このように肺と悲の感情はつながっており、秋は乾燥しているために肺が弱くなりやすく、肺が弱くなると悲しい気分になりやすいのです。
こうしたサインが現れたり実際に悲しい気分になったりしたときは、秋の夜長に肺の養生をしてみましょう。肺をいたわることで悲しい気持ちがやわらぐという、体とこころの不思議なつながりを実感できるかもしれません。
まずは、夜がはじまる直前の夕暮れどきに散歩をしてみてください。歩くことで肺の呼吸が活発になって気(き=エネルギー)のめぐりがよくなるほか、オレンジ色の夕日を浴びながらの散歩は心身をリラックスさせ、日中の緊張感をほぐしてくれます。
夜のリラックスタイムは、百合根(ゆりね)の薬膳茶でくつろぎましょう。百合根は肺に潤いを補う食材で、秋の乾燥から肺を守ります。また、精神を安定させる性質もあり、強いいらだちや気分の落ち込みなどをやわらげます。乾燥した百合根が市販されているので、煎じてお茶にして飲んでみて。はちみつを加えたり、くこの実やなつめをブレンドするのもおすすめです。
また、寝る前には吐く息を意識した深呼吸を行うのもいいでしょう。3秒息を吸って、6~7秒かけて息を吐くというように、吐く息を長くするのがコツで、これを数分間続けると内側に閉じこもった感情が外向きへと解放されやすくなります。
胸を開くストレッチも、肺をリフレッシュして前向きな気分を促します。両手を後ろで組んで肩甲骨を寄せ、胸を開いてストレッチしましょう。吐く息を意識した深呼吸とあわせて行うのも効果的です。

