信託無効確認請求に備える
民事信託は柔軟な財産管理や承継・事業承継を可能にします。ただし、契約内容によっては受託者の利益を優先し、受益者の利益を損なう信託が作られる場合があります。
現状、裁判で信託の無効を正面から否定した判例はありませんが、信託の本質を逸脱した内容は問題となる可能性があります。信託を組成する際は、本質を維持した内容にすることが重要です。
税務紛争に備える
税務紛争とは、相続人間の争いではなく、税務当局との紛争を指します。富裕層は資産が複雑かつ多様で担税力も高いため、税務調査が入る可能性が高いです。
事業承継や創業者の相続が発生した際、申告内容に誤りがあると、当局は是正処分を行い、加算税・延滞税などのペナルティが発生するほか、長期の法的紛争に発展する可能性があります。さらに、ファミリービジネスでの申告漏れが報道されると、レピュテーションリスクも生じます。
対策としては、税務調査で指摘されやすいポイントを事前に把握し、当局が納得できる資料や理論構成を整備することが重要です。問題が発覚した場合に軽減策を用意しておくことも、紛争予防に有効です。
酒井 ひとみ
シティユーワ法律事務所
