◆「若者は飲み会に来ない」は、大人が作った勝手なイメージ?
二つ目が、「飲み会恐怖症」。上司側が「今時の若者は飲み会を嫌がるだろう」という思い込みを指している。しかし、この 思い込みの前提となる“飲まない若者”像は、上司側が持つ「勝手なイメージにすぎない」と舟津氏は指摘する。「メディアやSNSでは、若い世代が職場の飲み会を毛嫌いしているかのような発信が目立ち、そのイメージが独り歩きしています。しかし、実態は異なります。日本生産性本部の調査では、2016〜’18年の新卒の8割超が『職場の飲み会を優先したい』と回答。さまざまなデータを見ても賛否の割合は3~6割に分散しています。つまり、飲み会に対する姿勢は“人による”としか言えず、若者全体の傾向としては語れません。『若者は飲み会に来ない』と一括りにするのは、上司側の思い込みなのです」

「コロナ禍で学生時代に飲み会の空気感や文化に触れる機会が極端に少なかった層がいることは一因でしょう。飲みの場にはお酌や席次など独特の作法もありますし、女性にとってはセクハラへの懸念もある。こうした環境から戸惑いを覚える若者がいるのは事実ですが、広く見れば一部の意見であり、かつ年齢を問いません」
ただ、そうした極端な声はネット上で可視化されやすく、それが世代全体の傾向として受け取られてしまう。こうした誤読の積み重なりが「飲み会恐怖症」を助長しているのだ。では、上司側は飲み会をどのように設定すべきなのか。
◆「若者はすぐ辞める」恐怖心の正体
「飲み会に行くくらいなら、勉強や自己投資に時間を充てたり、Netflixなどを楽しみたいと考える若者もいるでしょう。ただし、これは若者に限った話ではありません。組織として飲み会が本当に必要であれば、過度に遠慮せず、明確な意図を持って声をかければいいんです。大人が『こういうものだ』と道筋を示したほうが、むしろ若者にとっては迷いが減り、参加のハードルも下がるはずです」上司側が抱きがちな三つの不安のうち、三つめが「早期離職恐怖症」、すなわち「若者はすぐ辞めるのでは」という上司側の思い込みだ。しかし舟津氏は、これも飲み会離れと同様、決定的な裏付けがあるわけではないと指摘する。
「’21年に大学を卒業した人の3年以内離職率が34.9%に達し、過去15年で最高と大きく報じられました。しかし、厚生労働省の大卒3年以内離職率を長期的に見ると、平成以降はおおむね25〜35%の範囲で推移しています。
つまり『若者がすぐ辞める』という現象は最近に限ったことではなく、平成以降一貫して約3割前後が離職するというのが実態です。たしかに直近15年は32%前後で安定していたため34.9%は際立って見えますが、誤差といえる程度の変動といえます」

「離職率は企業規模や業界によって実態が大きく異なります。大企業の離職率は20%台と比較的低く、エネルギー関連企業の中には3年間の離職者がゼロというケースすらあります。一方で、宿泊業のように慢性的に離職率の高い業界もある。このように、離職率は企業・業界ごとに差があり、『全体で3割』という数字では個々の実情を反映しきれないのです」
ただし、その一方で若者の「転職志向」は確かに高まっているというが……。
「年功序列に支えられた終身雇用が崩れつつあり、非正規雇用が増加。パナソニックの黒字リストラに象徴されるように、コスト削減のため、企業の安定のために労働者の不安定を経営に織り込む状況が広がっています。
その中で、若者の間で『年功序列』の復活を望む声が増えているという調査もあります。つまり、必ずしも『キャリアアップ』ではなく、安定を求めて転職をしているだけというケースもある。しかし、『転職した』という一面だけを見て若者を『成果主義で野心的』と捉えてしまうケースは少なくない。ここには大きなギャップがあります」

