工夫とアイデアに溢れた台所を訪ねた&Premium145号(2026年1月号)「料理好きの台所」より、美術家・岡崎真悟さん、英会話講師・岡崎あかねさんの台所を紹介します。





家族の輪が生まれる、〝見たい景色〞に出合える喜び。
岡崎真悟さんとあかねさんが息子と愛猫3匹と暮らす一軒家は、元は卓球場だった建物を改装して作られたもの。ここから家族の新しい暮らしが始まった。倉庫のような115㎡のつくりや広さを生かそうと、土間と部屋の壁を取り払ったのだという。台所、リビングダイニング、ベッドルームがひと間続きの空間は、天井高で開放的な気分にさせる。
台所はその空間の真ん中にあり、家族の様子をそっと見守ることができる。真悟さんは、美術家であるがゆえ、自分の眼で「見るということ」を生活の中で大切にしている。所々に、そのことを物語るいくつかの工夫がなされていた。
「キッチンカウンターのすぐそばのコーナーには窓がありました。それを取り払って、真っ白いペンキを塗った壁にして、自分の大きな作品を飾るスペースにしています。人は毎日同じ気持ちでは生きていないから、瞬間、瞬間で見えるもの、感じるものが変わっていく。そういう意味でも、台所やリビングでの作業中にふと視線を送った先に作品があることに意味があるんです。眺めることで心に余白が生まれたり、新たなイメージが膨らんだりするので」
もう一つは、ガスコンロの眼前にある窓辺の景色。
「古道具で購入した木製の窓枠をしつらえました。今よりももう少し大きな枠だったのですが、やや小さいサイズに窓枠を切り出して見た目を整えたんです。そこから見えるのは、最近ともに暮らし始めた2羽の鶏や自分たちで植えた果樹や植物。ここのところパスタづくりに目覚めてよく料理しているのですが、庭で鶏がウロチョロしている様子を眺めている時間がとても心地いいんです」
あかねさんが続ける。「産みたてほやほやの新鮮な卵を目玉焼きにして食べるのが朝食の楽しみ。息子が鶏たちの世話をして、戯れる姿も愛おしい風景です」
そうした日々の温かな時間は、暮らすこと、食べることに日々、愛を注いでいるからこそ育まれるものだろう。台所にある木の素材もまた、岡崎家の暮らしを優しく包む大切なパーツに思えてならない。
「古い木材の質感が好きなんです。食器棚の上に飾った流木は、海で拾ってきたもの。キッチンカウンターは親しくしている工務店に頼み、いろんな解体現場で出てきた板材を組み合わせて造作してもらいました。そばにあるサイドテーブルの脚も自分で取り付けてみたりして。そうやって、台所空間を少しずつ手作りするのを楽しんでいます」





岡崎真悟、岡崎あかね美術家、英会話講師
真悟さんはさまざまな質感の紙を使い、自身のアイデンティティを投影したアートを国内外で発表。あかねさんはオンラインで英会話を教えている。
photo : Tetsuya Ito edit & text : Seika Yajima

COOKING LOVERS’ KITCHENS / 料理好きの台所。&Premium No. 145
かつて住まいの裏方であった台所は、いまや家づくりの軸となる、暮らしの中心にある存在になりつつあります。いい台所は、使い勝手のいい台所。使う人が自分自身の勝手にあわせて工夫をするのです。そして自分の勝手というのは、繰り返し料理をする中ではじめて見えてくるものですから、心地のよい台所の持ち主は、すなわち 料理好きであるといえるのではないでしょうか。今号の特集は「料理好きの台所」。手をかけ、使い込んだ台所からは、その人が楽しげに腕を振るう姿や、豊かな食卓や暮らしそのものが透けて見えるようです。すべてのものを取り出しやすくしている人、スッキリ何もない空間で料理に励む人、菜箸や布巾ひとつまでこだわって選ぶ人。工夫とアイデアに溢れ、すみずみにまで目の行き届いた、16組の料理好きのみなさんの台所を拝見します。
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