2025年の靴業界を総括しつつ、2026年度の予測をしていきましょう。昨今の靴業界は単純明快で「超サバイバル時代の到来」でした。象徴的だったのが、2024年10月のナイキのCEOの交代です。オンラインショップが普及し、5年前のコロナ禍で非接触の販売によって一人勝ちしていたナイキですが、新興ブランドの成長とともに経営不振に。現場たたき上げのエリオット・ヒル氏へバトンタッチとなりました。東京でも街中で足元を観察していると、ナイキを履いているのは若い学生ばかり。しかも、古いモデルの復刻版が多く、高いナイキにこだわる理由が見当たりません。そういった流れが顕在化した一年でした。
中年以降の足元のスニーカーは、「オン」「HOKA」といった比較的若い実力派メーカーが目立った一方、とにかく高い。さらに在庫がなく手に入らないといった事情もあり、カウンターとして安さに特化した「ワークマン」が目立っています。オンやHOKAはデザインだけを模倣した粗悪なメーカーも乱立しはじめ、その光景は10年前のナイキの立ち位置そのものです。
しかも、人気メーカーのモデルは、円安と免税の影響で、日本の在庫の大半は外国人観光客に買われてしまい、日本人が慢性的に手に入れられなという事態に陥っています。
◆専門靴が街に出る時代へ。アシックス「ライフウォーカー」が変えた常識

何も知らないとこれが実は「介護靴」とは誰も気づかないでしょう。シニア、リハビリ用に開発されているので、クッション、安定感、すべりづらさは完璧。こういった隠れた実力派シューズが2026年の大きな流れになると個人的には予測しています。
◆履くだけで痩せる? 怪しいインソールの急増と本物の見極め方
そんな日本で売れたもので、かつ外国人観光客にまだ買われていないものが「機能性インソール」です。筆者は長年インソールの世界も観察していますが、外からは見えないモノゆえに、なかなか表立った動きは見えづらいのですが、足の悩みを「靴単体」だけで解決するのではなく、「靴×インソール」という組み合わせで選択肢が何倍にも広がることが認知されたのが、今年だったと思います。まさにインソール元年です。スマホ単体のスペックではなく、どのアプリを入れるかで、スマホの世界が変わるのと同じ図式です。アプリ同様、インソールも玉石混交がここまで激化したのも初めての体験でした。「履くだけでやせるインソール」「履くだけでゴルフの飛距離が伸びるインソール」などなど、普通に考えれば「そんなバカな」とわかりそうな怪しげな商品がネットで飛ぶように売れ、筆者の周りでも後悔している方が続出しています。釘を刺しておきますが、「履くだけで〇〇系」のインソールにロクなものはありません。インソールはあくまで靴とワンセット。どんなにすぐれたアプリでもスマホがなければ無意味なのと同様に、あくまでサポートに徹する脇役なのです。インソール界もサバイバルが激しいので、来年以降、粗悪品はかなり淘汰されると思います。


