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ホテルの鮨店がいま、面白い。気負わず楽しむ進化形江戸前鮨の魅力

ホテルの鮨店がいま、面白い。気負わず楽しむ進化形江戸前鮨の魅力

個人的な実感だがこの数年、世界の“鮨”が新しいフェーズに入ってきているように思う。

日本の食文化である鮨が各国でローカライズされ、“カリフォルニアロール”などに進化したり、ファストフード感覚で大衆化したりというのははるか昔のこと。

近年、日本を離れすっかり一つのジャンルとして世界中に定着した鮨が一周回って(いやもっと?)カジュアルな「SUSHI」と高級な「Edomae SUSHI」に二極化。日本の有名鮨店で修業をした外国人シェフが自国に戻り店をオープンしたりすることも増え、“江戸前”の仕事をリスペクトしながらも、それぞれの個性を映した鮨やつまみを「OMAKASE」で出す店が増えてきているのだ。

江戸前鮨を理解し、握る外国人料理人がここ10年ぐらいの間で世界に増えてきた

そうした鮨の店の記事やウェブサイトを見ると、“Edomae Elegance(江戸前エレガンス)”という言葉をたびたび見かける。“江戸前"の精神は崩さずに、そこに独自のエレガンスを加えたという解釈は、なるほど、言い得て妙だ。

そして今、その流れは日本のホテルにも来ている。この2年くらいの間に、ラグジュアリーホテル内に鮨店が続々と誕生しているが、多くが江戸前鮨を軸に多様なコース構成で楽しませる “江戸前 エレガンス”系の鮨店なのだ。

前置きが長くなったが、最近私はこのホテルの“江戸前 エレガンス”系の鮨店がお気に入り。ホテルとしては、海外客を意識してのことだろうけれど、これがなかなかに楽しく使い勝手がいい。特に友人同士で「おいしいお鮨でも食べようか」となれば真っ先に候補にあげたくなる。

理由はいくつかあるが、まず街の高級鮨のように、目の前の一貫に集中しなければならない張りつめた空気がない。洗練された雰囲気は、非日常感がありながらも適度に会話も楽しめる。また、江戸前鮨をしっかり堪能しながらも、新しい発見があるのが楽しい。

握りは正統派だが、つまみやコースの仕立ては自由に表現。フォーシーズンズホテル大阪の『鮨 ラビス 大阪 ヤニック・アレノ』のつまみ「ササニシキのギモーブ・魚介のコンソメ」

今や町の人気鮨店は予約困難な上に、5万円以上があたりまえだ。一方、ホテルの鮨店は予約も取りやすいし、ランチなどを利用すれば2万円もあれば食べられるのも魅力。

ということで、リラックスして鮨を味わいたいならこうしたホテルの鮨店はかなりおすすめなのだ。 今回は、東京・京都・大阪から注目の店を1軒ずつご紹介したい。

星のや東京鮨 大手門

和食と江戸前鮨が響き合う“二重奏”を楽しむ

「星のや東京」に外来客もOKの鮨店があるのをご存知だろうか。

ここは、なんといってもシチュエーションが最高だ。“旅館の玄関”で靴を脱ぎ、下駄箱に靴をしまい、畳の感触を楽しみながら地下へ下りていくだけで心が躍る。地層を思わせる静かな空間を抜けた先の小さなのれんをくぐると、目の前に現れるのは樹齢200年を超える青森ヒバの一枚板。全8席の白木のカウンターには凜(りん)とした空気が流れるが、迎えてくれる料理長・西村 将氏の柔らかい笑顔にホッとする。

西村氏は京都「貴船 右源太」や「東山 Touzan」で日本料理の道を追求してきた人物。ここではその経験に裏打ちされた、四季を感じる美しい日本料理と江戸前鮨の両方をダブルで楽しむことができる。

この日の日本料理の一品。「ハモの落とし、レタス、加茂茄子(なす) レモンの出汁」

会席の流れを汲(く)むように先付けから始まる酒肴(しゅこう)は、イワシの梅煮・東寺揚げや、レモンがきいたハモの落としの椀(わん)、マグロの巻物など、手の込んだ品々が6品ほど登場する。温かいもの冷たいもののバランスも良く、目にもおなかにも心地よい流れだ。

通年提供予定の「まぐろの巻き物」。長芋や大根の酢漬け、マグロを錦糸卵と海苔(のり)で巻いた美しい一品

そして握りへと続く。

まずはマグロの赤身の早漬けやコハダの酢締めといった江戸前の鮨が登場。続いて和歌山の郷土料理「めはり寿司」をマグロのトロ、らっきょう、いくらで彩り豊かにアレンジした一品など変化球も挟みながら進んでいく。

最後の締めが、アジの棒鮨、ハモの照り焼き鮨、卵の鮨が皿盛りになって出てくるのもユニーク。

しっかりと江戸前の仕事をほどこした鮨から、キスの昆布締めに梅肉を忍ばせた握りなども登場

日本旅館の中にある鮨店ならではの、“日本料理と鮨のいいところどり”を味わえる魅力的な一軒だ。

鮨 大手門星のや東京
住所:東京都千代田区大手町1-9-1 星のや東京 B1F
電話番号:050-3134-8091(星のや総合予約)
営業時間:17:30〜/20:00〜(2部制ディナーのみ)
休日:水曜・木曜・日曜
価格:おまかせ 36,300円
URL:https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/hoshinoyatokyo/dining/

デュシタニ京都シェフズテーブル 紅葉鮨カウンター

京野菜と江戸前鮨。京都ならではの組み合わせを

デュシタニ京都のガーデンフロアにあるシェフズテーブルレストラン「Kōyō 紅葉」。そこに2025年夏、ひっそりと鮨カウンターが誕生した。タイ発祥のラグジュアリーホテルが、銀座の名店「鮨 石橋正和」とタッグを組み、誕生させた本格江戸前鮨店である。

シェフズテーブル「紅葉」の奥にひっそりと誕生した鮨カウンター

このお店はぜひランチコースを予約してほしい。

というのも、ランチにはもう一つの主役と言える朝採れの京野菜が登場する。鮨に野菜は邪道、かもしれない。けれど、特に女性ならいろいろな野菜が鮨の合間に出てくるのはうれしいのではないだろうか。

この日のすり流しはとうもろこし

コースは季節の野菜のすり流しから始まり、マグロの漬けの炭火焼き、あん肝とシャインマスカット、ボタンエビの土佐酢ジュレなどの前菜盛り合わせが続く。

ここで、“本日の野菜”がやってくる。朝採れの京野菜は実にみずみずしく美味しそうだ。干した大根に京都・石野の金山寺味噌(みそ)、トマトにキュウリ、オクラ、そして自家製ガリが小皿に美しく盛り込まれ、これが鮨の合間の箸休めになる。

この日の朝採れ野菜は、鮮度抜群でイキイキとしている。その日の野菜を鮨の合間のつまみに

この後は、鮨とつまみがテンポ良く登場する。ランチではアジなどの地魚も入り、夜の高級ネタが並ぶラインナップとはまた違った魅力がある。ネタは豊洲からも直送されるほか、東京の店と同じ仕入れ先から選りすぐられたものが並ぶ。

ランチコースの鮨はあぶったアジ、中トロ、剣先イカ、マグロなど7貫程度。その日にあるネタを聞いて追加注文も可能(別料金)

赤酢の酢飯は東京よりまろやかに調整され、関西の味覚に寄り添っているが、江戸前らしい味わいだ。

キジハタ、剣先イカ、の後は目の前の炭火で焼いた加茂なすを間に挟むのも良い。3種登場するマグロは、中トロを直接炭に当てて軽く炙(あぶ)り、香りを引き出すなど飽きさせない仕立てになっている。

目の前で炙る、焼く、など臨場感ある演出は立ち上る香りもごちそう

ランチは海外のゲストも少なく、価格も控えめ。京野菜と本格江戸前寿司を食べられる場所としてアドレスに加えておきたい一軒だ。

シェフズテーブル紅葉/デュシタニ京都
住所:京都府京都市下京区西洞院通正面上ル西洞院町466 デュシタニ京都 B1F
電話番号:075-343-7150
営業時間:ランチ 12:00〜14:30(L.O.14:00)ディナー 17:30〜22:00(L.O.20:00)
休日:水曜・木曜
価格:ランチ 15,000円、ディナー 28,000円
URL:https://www.dusit.com/dusitthani-kyoto/ja/dining/koyo/

配信元: marie claire

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