子どもの時から、人のおうちに行くのが好きだった。
自分の知らないものがたくさんあることにワクワクする。でも何より、相手のペースに合わせて過ごす時間が心地よい。この時間は、「ただそこにいるだけでいいんだ」って思うととても安心する。
4週にわたって、大切な友達のおうちにお邪魔した時のことを書いてみる。
最近、関西弁を話していないなと、「あいみょんのオールナイトニッポンGOLD」を聞いてふと思った。今日の目的地までは、家から車で40分。行き帰りでラジオを聞くのがちょうどよい距離。この時間はすごく考えごとをしている。
この日は、小林花さんの自宅を訪ねた。彼女は、印刷設計の仕事をしながら、〈zayca〉というニットブランドのデザイナーとしても活動している。

花さんはとにかく優しい。友達に紹介したら、その友達も同じことを言っていたので滲み出ているんだと思う。
花さんは、本とニットを作っている。好きなものが同じっていうのもあるけれど、そういう優しさに癒やされたくて、彼女の家にたまに遊びに行っている。


おうちに上がると、台湾のお土産でもらったお茶を淹れてくれた。漢字で何か書いてあるけれど、意味はわからない。かわいい字面のパッケージを選んで淹れてもらった。“ジャケ茶”淹れだ。

家のスピーカーからは、Tenniscoatsのゆっくりとした音楽が流れている。ソファに沈みこむような感覚になって、だんだん帰りたくなくなってくる。


僕は、前日に買っておいた『銀座マネケン』のワッフルを持って行った。マルバツゲームができそうな形が好きで、昔はよく大阪駅で買って食べていたので愛着がある。変わらない味みたいなものにすごく弱い。
透明のポットの中でお茶の色が変わっていくのを見ながら、ニット作りの話を聞いた。
「どうしてニットを表現方法に選んだのか?」と聞いたら、花さんは数分考え込んでいた。
考えている人を見るのは好き。考えることにいっぱいいっぱいで、表情が作れなくて、どこか遠くに行っているような顔を見れるから。
その後、彼女は「編んでいると落ち着く」と答えてくれた。毛糸のまま編まれているだけなので、やり直しがきく。手を動かしているうちに、自分がそのまま物になっていく感覚があって、自分を整えられるらしい。
必然性があっていいなと思った。表現者はみんな自分の心地よい場所みたいなものを探している気がする。

花さんは出かけるといろんな物を手で触っている。自分も真似して触ったりする。触ってはじめてわかることがたくさんがある。

写真家 服部恭平

はっとり・きょうへい/1991年、大阪府茨木市生まれ。東京在住の写真家。2018年にファッションモデルとして 活動する傍ら写真を始める。2025年に、服部恭平写真事務所を設立。変わりゆく日常の中で私的なイメージを切り出している。主な個展に、2020年に、「2019-2020」@BOOKMARC (東京・原宿)、2024年に「バコン」@haku kyoto(京都)/229(東京・御徒町)、「Through the lensof Kyohei Hattori」@agnès b. Shibuya(東京・渋谷)、agnès b. KyotoBAL(京都)など。

