国土交通省が、住宅金融支援機構が提供する住宅ローン「フラット35」の融資限度額を引き上げる検討を始めたことが分かりました。現在、融資限度額は8000万円で、2005年から変わっていません。
なぜ今、融資限度額を上げるかと言えば、いわずもがなの昨今の物価高。住宅業界でも建築費の高騰が続いており、それに対応するための融資限度額の引き上げというわけです。この機会に改めて、フラット35がどのような制度なのか、メリット・デメリットを含めて詳しく見ていきましょう。
フラット35とは?
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「フラット35」という住宅ローン。すでに利用している人はどのようなものか良く分かっているでしょう。しかし、検討すらしたことのない人の多くは、どんなローンなのかまったく分からないのではないでしょうか。
まずは、「フラット35」の概要を見ていきましょう。「フラット35」とは、民間金融機関と住宅金融支援機構が提携する最長35年の全期間固定金利の住宅ローンのこと。最長35年間、金利が変動しないから「フラット35」というわけです。金利変動制のローンとは異なり、資金の受取時に返済終了までの借入金利と返済額が確定します。
融資限度額は先述したように8000万円ですが、2024年10月からペアローンが解禁され、夫婦二人合わせて最大1億6000万円まで借り入れることができるようになりました。
住宅ローンでは、保証人を求められることもありますが、フラット35では保証人は不要。保証会社へ保証金を支払う必要もありません。ちなみに、メガバンクや地方銀行、信用金庫など、多くの金融機関の住宅ローンは保証会社への保証金が必要となります。
また、健康上の理由から団体信用生命保険(団信)(※1)への加入が難しい人でも、フラット35は利用可能です。一般的な住宅ローンでは基本的に団信への加入が義務付けられており、団信の審査に落ちてしまうとローンが利用できません。
一方、フラット35でも団信は原則として加入することにはなっているものの、団信の審査に落ちてもローンは利用できます。
※1)住宅ローン契約者が死亡したり高度障害状態になったりした場合に、残りの住宅ローンが保険金で完済される保険制度
フラット35の利用条件については以下の通りです。
・申し込み時の年齢が満70歳未満
・日本国籍を有している
・返済負担率が基準値以下(※2)
・申込本人またはその親族の方が居住する住宅を購入・新築するための資金であること
・住宅金融支援機構が定めた技術水準を満たす住宅であること
・床面積が一戸建てで70平方メートル以上、共同住宅で30平方メートル以上であること
※2)年間の合計返済額が、額面年収400万円未満であれば30%以下、400万円以上であれば35%以下
フラット35のメリット・デメリット
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フラット35の一番のメリットといえば、返済額がずっと変わらないことでしょう。2024年以降の日銀の利上げに伴い、変動型の住宅ローン金利が上昇しました。これから先もいつ金利が上がるかもしれない中で、返済期間中ずっと固定金利なのは利用者にとって大きな安心材料でしょう。返済額は返済期間中ずっと変わらないため、長期的な人生プランも立てやすくなります。
先述のように保証料が不要な点もフラット35のメリットとして挙げられます。また、申込者の健康状態などで団信に加入できなかった場合でもローンが組める点もフラット35の大きなメリットです。資金に余裕ができた場合には多くの人が繰り上げ返済を考えますが、フラット35では繰り上げ返済の手数料がかかりません。ちなみに、みずほ銀行の場合、繰り上げ返済はネットバンキングでは手数料無料ですが、店頭だと3万3000円かかります。
メリットしかないように思えるフラット35ですが、デメリットもあります。フラット35の代表的なデメリットは、変動金利の住宅ローンより借入時の金利が高い点です。フラット35の金利は大体2%前後。対して、一般的な銀行の住宅ローンの金利は0.6%ほどです。参考までに現在、三菱UFJ銀行の変動金利住宅ローンの金利は0.595%~0.675%の間で設定されています。
また、メリットである「返済期間中ずっと固定金利」は、デメリットにもなり得ます。それは、借入以降に市場金利が下がったとしても、返済途中でローンの金利が下がることはないからです。変動金利型の住宅ローンであれば、市場金利の下落に従って住宅ローン金利も下がります。
ここまで、フラット35の概要、そしてメリット・デメリットを見てきましたが、読者の皆さんはどのように感じたでしょうか。何事にも良い面と悪い面があり、フラット35でも金利が固定されている点はメリットでもあり、デメリットにもなり得ます。団信に加入しなくても利用できるのはフラット35のメリットですが、万が一、返済途中に契約者が亡くなってしまえば、重い返済負担が家族にのしかかってきます。後々、「こんなはずじゃなかった」とならないためにも、メリットだけではなくデメリットも十分把握した上で、フラット35を利用するかどうかを検討しましょう。