
気が置けない学生時代の友人たちが集まると、あの頃に戻ったかのような楽しいひとときに。けれど、そんなときにいやでも気になるのが、お互いの体形の差。昔に比べてずいぶん太ったなという友人もいれば、あの頃とあまり体形が変わらない友人も。同じ年なのに、なぜこんなに違いが出るの?
そこで池谷医院院長の池谷敏郎先生に、“太りやすい人”と“太りにくい人”の違いについて伺いました。
「安静時のエネルギー消費」が多い人ほど太りにくい

結論からいうと、“太りやすい人”と“太りにくい人”の違いは「エネルギー代謝」の差。エネルギー代謝とは食べたものを吸収分解してエネルギーに変換・消費する体のしくみのことで、呼吸などの生命維持のためのエネルギー代謝である「基礎代謝」、食事の消化活動にともなうエネルギー代謝の「食事代謝」、体を動かすことによるエネルギー代謝の「身体活動代謝」があります。
これらのエネルギー代謝は、体を動かさなくても行なわれる「安静時のエネルギー消費(基礎代謝と食事代謝)」と、体を動かすことで行なわれる「活動時のエネルギー消費(身体活動代謝)」に大きく分けられますが、実は1日に消費されるエネルギーの70%は安静時のエネルギー消費。この安静時のエネルギー消費が多い人ほど、同じ量を食べても太りにくい体質となるわけです。
エネルギー消費というと運動に焦点が当てられることが多く、「毎日運動しなければ」「体を動かさなければ」となるもの。でも、太りにくい体を目指すなら安静時のエネルギー消費を高めることが重要なんですね。
「ベージュ脂肪細胞」を増やして太りにくい体に

では、安静時のエネルギー消費はどうすれば高めることができるのでしょうか?
安静時のエネルギー消費に深く関わるのが、脂肪細胞のひとつである「褐色脂肪細胞」。脂肪細胞とは脂肪を構成する脂肪酸を蓄える細胞で、体内の余分なエネルギーを脂肪として蓄える白色脂肪細胞と、脂肪を燃焼させて熱を生み出す褐色脂肪細胞に大きく分かれます。そして、褐色脂肪細胞の熱を生み出す働きが高いほど、安静時のエネルギー消費が高まるのです。
ならば、褐色脂肪細胞を増やせば安静時のエネルギー消費が高まるはず……と思うところですが、残念ながら褐色脂肪細胞は増やすことができません。新生児のときに最も多く、その後は加齢とともに減少していくのですが、その減少の仕方には個人差があるため50代ともなると体形にその違いが顕著に現れてしまうのです。
ところが近年、褐色脂肪細胞と同様に脂肪を燃焼させて熱を生み出す「ベージュ脂肪細胞」の存在が明らかになってきました。“やせ細胞”とも呼ばれるこの細胞、注目すべきは褐色脂肪細胞とは違って増やすことができる点。白色脂肪細胞に運動や食事などによる刺激が加わると、ベージュ脂肪細胞に変化することがわかっています。
つまり、ベージュ脂肪細胞を増やせば安静時のエネルギー消費を高めることができ、太りにくい体に近づくというわけです。

