花粉の侵入をブロックする「衛気(えき)」のさまざまな働き

東洋医学では、花粉やウイルスなどの有害物質が体内に侵入するのを防ぐ体表面のバリア機能を「衛気(えき)」と呼びます。これは、体の生命エネルギーである「気(き)」の一種で、皮膚や粘膜などの体表面を速いスピードで流れている活動性の高い気のこと。その働きは次のようなものになります。
◉衛気の働き
①体表面を保護して有害物質の侵入をブロックする
②内臓、筋肉、皮膚などを温める
③汗腺の開閉をコントロールして発汗を調節し、体温を一定に保つ
④皮膚を潤し、キメを細かくし、ハリを与える
衛気が充実している人は、花粉症などのアレルギーを発症しにくいほか、かぜをひきにくい、鼻やのどの粘膜を傷めにくい、冷えにくい、肌にツヤとハリがあるなどの傾向があります。反対に衛気が不足している人は、花粉症などのアレルギーを発症しやすいほか、かぜをひきやすい、汗をダラダラかく、鼻水が出やすい、のどが痛くなりやすい、冷えると体調を崩しやすい、肌にツヤがなくキメが粗いなどの傾向が見られます。
つまり、衛気を充実させることは免疫機能を整えて花粉症予防やかぜ予防につながるだけでなく、冷え予防や美肌にも役立つというわけです。
花粉に強い体作りを目指すための3つの衛気強化法

花粉症対策として衛気を充実させるためには、花粉症シーズン前の少しでも早い時期から生活習慣を見直すことが大切です。次の3つの対策をさっそく始めてみてください。
①主食には米類を、お惣菜にはいも類を、おやつにはなつめを
衛気は気の一種なので、衛気を充実させるにはまず毎日しっかりと「気を補う食材」をとりましょう。特に大切なのは主食で、パンや麺類などの小麦ではなく気を補う食材である米類にするのがおすすめです。もちやもち米も◎。いも類も気を補う食材の代表格なので、味噌汁やお惣菜などでよくとりましょう。そのほかなつめも気を補う性質に優れた食材です。ドライなつめやなつめチップスなどをおやつ代わりにするのもいいでしょう。
②胃腸が弱い人は“脾の働きを高める養生法”も実践しよう
気を補う食材は五臓の脾(ひ=胃腸機能)で消化吸収されて衛気となるため、脾の働きをよくすることも欠かせません。食欲不振や消化不良などの胃腸の不調が気になる人は、「50代のこよみ養生 Vol.11」でご紹介している“脾の働きを高める養生法”も実践してください。
③こまめな深呼吸とツボ押しで衛気をくまなくめぐらせる
衛気を体表面へとめぐらせるためには、呼吸の力が必要です。特に呼吸の吐く力によって衛気は体表面へと発散され、皮膚や粘膜などをくまなくめぐっていきます。そのため、毎日意識的に深呼吸をすることを習慣づけて、衛気の働きを高めていきましょう。
まずは背すじを伸ばして、口からゆっくりと長く息を吐いてください。最後まで息をしっかり吐き切ることを意識しましょう。次に、鼻からゆっくりと息を吸ってください。息をしっかり吐き切れていれば、自然と深く息を吸うことができます。このとき、おなかの奥深くまで息を吸い込むようなイメージで。この「口からしっかり吐く→鼻からゆっくり吸う」という深呼吸を、朝起きたときや一息つくとき、入浴時、寝る前など、気づいたときにこまめに行うことをルーティンにしましょう。

◉息を吐き切れない場合
息を吐くときに深く吐き切れない場合は、五臓の肺の力が弱っている可能性があります。東洋医学では肺と皮膚はつながっていて、衛気の流れにも直接関わっていると考えられているので、この肺と皮膚の気の流れをよくする合谷(ごうこく)のツボを押すことがおすすめです。手の甲の親指の骨と人差し指の骨が交わった所からやや人差し指側にあるへこんだ部分にあり、ここを反対の手の親指でゆっくりとほどよい強さで数回押しましょう。

◉息を深く吸えない場合
息を吸うときにおなかから深く吸えない、途中でせき込む、息切れするなどの場合は、五臓の腎の力が弱っている可能性があります。腎は生命力を蓄える臓ですが、呼吸によって取り込んだ外気のエネルギーを体の深部まで引き入れる「納気」という働きも持っています。この納気の働きを促す腎兪(じんゆ)のツボをよく押しましょう。ウエストの一番細いラインの背骨から指2本分外側にあるツボで、ここを親指でゆっくりとほどよい強さで数回押してください。
花粉症予防は、冬の養生が大きなカギを握ります。冬の最後の節気である大寒のうちから、花粉に負けない強い体作りを目指していきましょう。
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