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「AIは仕事を奪う?」 女性にとって敵か、味方か

「AIは仕事を奪う?」 女性にとって敵か、味方か

リスクの中にある魅力的な機会

ディーシー・ワインスタイン氏だけではない。LinkedInの英国労働力信頼度指数によれば、多くの労働者はAIを脅威ではなく、能力を高めるツールと見なしている。過半数(53%)はAIによって単調な作業から解放され、より価値の高い創造的または戦略的業務に集中できると信じている。41%はすでにタスクの迅速化と生産性向上に寄与していると答えている。

ディーシー・ワインスタイン氏は楽観的だ。「仮にAIが私たちの仕事の多く、あるいはその一部を奪い、週に1日か2日しか働く必要がなくなったとしましょう。もしそれが本来あるべき姿だとしたら? もし未来が労働時間を短縮し、その時間を家族と過ごしたり、自然に触れたり、スキルアップに充てたり、つまりは私たちが生きる本質的なことに費やすものだとすれば?」。これは魅力的な考えだ。テクノロジーがついに私たちを「ブルシット・ジョブ(くだらない仕事)」という日々の苦役から解放してくれるかもしれないというのだから。この「ブルシット・ジョブ」は人類学者David Graeber(デイヴィッド・グレーバー)氏が、無意味または満たされない、それを実際に行っている人さえ存在すべきでないと思うような仕事を指した用語だ。

すでにこの変化を経験している女性もいる。カマウ氏は生成AIツールの活用がキャリア変革をいかに加速させたかについて語っている。「以前は数週間かかっていた作業が、このようなツールを使い始めてからは数時間で済むようになりました」と彼女は言う。AIとの関わりを「見習いから達人へ」と表現した彼女の経験は、著書『Out of the Loop, Into the Algorithm: How I Finally Made Friends with AI(ループから抜け出し、アルゴリズムの中へ:ついにAIと友達になった方法)』のインスピレーションの源となり、彼女はこれが急速な技術変化に適応する人々の助けになることを願っている。

人工知能と採用の専門家であるKhyati Sundaram(キャティ・サンダラム)氏はカマウ氏の楽観論に同調する。「AIは労働者がより意義深く、より高い付加価値のある仕事へ移行するのを支援するべく、反復的な業務を自動化するために使われるべきです」と彼女は説明する。

おそらくそうだ。しかし状況は決してバラ色ではない。すでにキャリアを確立した女性にとって、煩わしい業務から解放されるのは歓迎すべきことかもしれない。しかし新入社員の場合、その役割はしばしばルーチン的で、容易に自動化できるような業務を含むため、AIがスキルとキャリアアップへの道を構築する重要な初級レベルの経験を脅かす可能性がある。

マリッサさんは、AIとのやりとりが必要になるケースが増えていることを懸念している。「私はキャリア10年目で、美術の修士号を持っていますが、これから30年間は生き残るためにAIシステムとやらとやり合っていくことになるのです」と彼女は言う。「AIとの接点が増えれば増えるほど、満足度は悪化していくでしょう。求職者と採用担当者、医師と患者、運転手と乗客、あらゆる場面でそうです」

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Botivoの共同創業者イメ・エルムガッセン(Imme Ermgassen)氏は、彼女がホスピタリティ業界における「文化的緊急事態」と呼ぶ事態について警告している。ロボット技術がフロント業務(ホテルの自動チェックインから給仕ロボットまで)に進出するにつれ、即座にエントリーレベルの仕事の機会が消滅する。「ホスピタリティ業界は上層部の仕事ではなく、初級の仕事をAIに置き換えようとしているように感じます」と彼女は言う。雇用の喪失以上に、もっと深刻な影響がある。「多くの人にとって、ホスピタリティ業界は大学卒業後、社会で今後必要となっていく生活スキルを身につける最初の職場です。そうした仕事がなくなれば、若い世代全体が実社会への第一歩を踏み出せなくなります」。さらに、ホスピタリティ業界では女性が長期的に残るケースがほとんどない現状を踏まえ、自動化によって女性や若者が仕事に初めて足掛かりとなる役割そのものが奪われることで、不平等が深まるリスクがあると彼女は説明する。

効率の名のもとに失われる人間関係

自動化の進展には別のリスクもある。セルフチェックアウトやオンライン診療は便利だが、人間同士の接触を静かに断ち切る。虐待や支配的な関係にある女性にとって、レジ係や受付、医療従事者とのなにげない対面は、助けを求めたり苦痛を伝えたりする貴重な機会だ。こうした接点が失われれば、誰かに気づいてもらい、支えてもらう可能性も同様に失われる。AIは効率の名のもとに、人間的なつながりを最も必要とする人々を孤立させる可能性がある。マリッサさんが言うように「AIは人と人のつながりに防火壁を作り出した」のだ。

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AI 2027は、OpenAIの元研究者で同社の無謀な行動を懸念して離職したDaniel Kokotajlo(ダニエル・ココタイロ)氏と新型コロナの急速な拡大を正確に予測したAI研究者Eli Lifland(イーライ・リフランド)氏が主導する先見的なプロジェクトだ。AIがますます強力になる中で、世界がどう変貌(へんぼう)するかを探求している。楽観的なビジョンと警戒すべきビジョンの二つの対照的なシナリオを通じて、AIが人間の知能をどれほど速く凌駕(りょうが)しうるか、またAIが急ピッチで開発されたり、不適切に管理されたりした場合に生じうる社会的影響を検証している。主な警告事項には、制御不能化、競争圧力、広範な社会的混乱が含まれる。

「AIとSNSが我々を支配する中、人々は現実でのコミュニティを切望しています」とエルムガッセン氏は説明する。「交流の場が失われると、社会は分断される。異なる背景や意見を持つ人々がもはや出会わなくなり、すでに分極化した時代にさらなる分断を助長する可能性があるのです」

影響は社会的なものだけではない。職業的な側面もある。ヒューマンスキル研修機関「Let’s Talk Human Skills」の創設者兼ディレクター、Hayley Dawson(ヘイリー・ドーソン)氏はジェンダーに起因する緊急の懸念を強調している。ルーチン業務の自動化が進む中で、残された人間的スキル、たとえば直接的なコミュニケーション、自己アピール、目に見えるリーダーシップなどがキャリアアップにはますます重要になる。しかし、こうした行動を示す女性は「偉そう」「攻撃的」とレッテルを貼られ、不利益を被ることが多い。自動化された職場では、忙しさを演出して逃げ場となるような「単純作業」が減るため、こうした人間同士のやりとりがより厳しく監視されるようになり、結果として職場に、どんな行動をしても安全策がない状況が生まれると彼女は言う。

AIの台頭は職場の女性にとって課題と機会の両方をもたらす。調査は懸念すべきジェンダー格差を裏付けており、最近発表された報告書では、職場でAIツールを使用する男性は81.3%であるのに対し、女性はわずか58.8%であることが明らかになった。同様に、生成AIを活用した職種に就く女性の割合も男性より低い。

ドーソン氏は「女性が男性と同等の割合でAIを導入することが、公平な利益を確保するために最も重要な方法だ」と警告し、AI活用度の格差がこれからのキャリア機会・昇進・影響力の波において女性を置き去りにするリスクがあると指摘している。

配信元: marie claire

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