
「今アメリカに行くと、外食費がとんでもなく高くて驚いてしまう」…そんな話を耳にすること増えました。本記事では、ニューヨーク在住23年目のファッション/テクニカルデザイナー・あっち氏の著書『ニューヨークとファッションの世界で学んだ 「ありのままを好きになる」自信の磨き方』(KADOKAWA)より一部抜粋・再編集し、物価高・円安の影響を受けた外食・食材の価格の実態をご紹介します。
「ブルックリンで“7500円の”朝食を」…
ニューヨークで暮らしていると、恋しくなるのが和食です。とある週末の朝、私はパートナーと一緒にブルックリンの日本食レストランに足を運びました。雑穀米に味噌汁、焼き魚、卵焼き、お漬物……まるで「旅館の朝ごはん」のようなメニューがウリの人気店でした。
私が選んだのは、ご飯と味噌汁に焼き魚、さらに3種類のお惣菜が付いたスタンダードサイズ。価格は30ドル、日本円に換算すると約4500円です。パートナーは5つのお惣菜が付いたラージサイズを注文、こちらは38ドル(約5700円)でした。さらに温泉卵(2.5ドル/約375円)と、いくら(5ドル/約740円)も追加して、合計金額は75.5ドル(約1万1320円)に。
けれど、ここで終わらないのがニューヨークです。飲食代には、消費税(8.875%)とチップ(約20%)が上乗せされます。最終的な合計価格は98.81ドル。日本円にして約1万5000円でした。1人7500円の朝食……日本ではまず考えられない値段だと思います。
背景にあるのが、インフレによる物価高と円安の影響です。ニューヨークでは同じような和定食が、10年前なら、20ドル台前半で食べることができました。つまり、約50%も値上がりをしているというわけです。
インフレは、生活のさまざまな場面で実感します。牛乳(2リットル)は、数年前の5ドル(約750円)から、現在では6〜9ドル(約900〜1350円)程度に上昇。卵(12個入り)は5ドル程度(約750円)だったのが、鳥インフルエンザの影響で一時15ドル(約2250円)のピークを経て、現在は8ドル(約1200円)程度で落ち着いています。
慢性的な物価上昇に加えて、2025年5月から再開された学生ローンの返済や関税の影響などで米国の家計はさらに圧迫されています。食料の支援制度を利用する人も増え、街では窃盗が増加しています。小売店では、セルフレジでの万引きが多発していることから、見直しの議論もされているようです。
米国のビッグマック価格は、日本の「1.8倍」
円安も深刻です。2021年ごろまでは1ドル=110円前後でしたが、2024年以降、150円〜160円台で円が推移しています[図表1]。仮に50ドルの和定食でも、1ドル110円なら約5500円だったものが、160円で計算すると8000円になります。為替だけで4割以上の値上がりが生じている計算です。
[図表1]米ドル/円の為替推移(2000~2025年)
さらにそこにチップや消費税が上乗せされるため、実質的に日本と比べて5〜10倍の値段の朝食になるのです。
同じようなメニューでも、国によってこれほどまでに値段が違うのには驚きですよね。これを示したのが「ビッグマック指数」です。
[図表2]ビッグマック指数
ビッグマック指数とは、イギリスの経済誌『エコノミスト』が発表している指標で「マクドナルドのビッグマック(単品)が各国、いくらで売られているか?」を見ることで、その国の物価水準や通貨の評価を大まかに知ることができます。
ここでは日本でビッグマックが480円で買えるのに対し、米国では約900円。同じハンバーガーが、約1.8倍の価格で提供されていることがわかります。
あっち
