
メンタルの状態は季節によって変化することが知られていますが、東洋医学では冬は恐怖心が強くなると考えられています。今回はそんな冬のつらいメンタルをケアするための養生法と、記憶力UPにもつながる薬膳食材とツボ押しについてご紹介しましょう。
夜が長い冬は「恐怖心」が強くなる

今日は二十四節気の「大雪(たいせつ)」の5日目。日照時間は9時間48分(東京の場合)で、1年で日照時間が最も短い冬至(21日)の9時間45分に限りなく近づいてきています。
東洋医学では昼が長い季節は体内のエネルギーが外向きにめぐり、夜が長い季節は内向きにめぐると考えられており、秋分以降だんだんと強くなっていった内向きのエネルギーは、夜が14時間以上続くこの季節に最も強くなっていきます。
その内向きのエネルギーは春に備えて生命力を蓄える原動力となりますが、心のベクトルも内向きにするため、この時期は精神状態が内向的になる傾向も。そのためちょっとした物音にもビクッと反応する、昔の嫌な記憶がよみがえってきて不安になる、怖い夢を見る……といった経験が増えるかもしれません。これは恐怖心が強くなっている状態といえます。
東洋医学では、喜・怒・思(思い悩む)・悲・恐というの5つの感情を「五志(ごし)」と呼んでいて、このうち冬は恐(恐怖心)が強くなりやすいと考えられています。
最近の医学の研究では、マウスに天敵のにおいに似せた成分を嗅がせると、低体温・低代謝状態になって冬眠したように動かなくなることが報告されています。これは、天敵をほうふつさせる“恐怖のにおい”が、冬眠状態を導く可能性を示しているのだそう。冬に恐怖心が強くなるのは、寒く厳しい自然を生き抜くために体を守る、前向きな反応なのかもしれませんね。
読書や映画鑑賞で心を豊かにして恐怖心をやわらげよう

いくら本能的な反応とはいえ、恐怖心が強くなりすぎて不安が消えなかったり眠れなかったりするのはつらいものです。恐怖心をやわらげたいときや未然に防ぎたいときは、次の五志の関係性を活かして恐怖心を抑える方法を試してみてください。
・喜びは、悲しみを抑える
・悲しみは、怒りを抑える
・怒りは、思慮を抑える
・思慮は、恐れを抑える
・恐れは、喜びを抑える
これは五志それぞれの“抑制し合う関係性”を表したもので、このうち恐怖心を抑えるのは「思慮」。思慮は思い悩む感情なのですが、ポジティブに言い換えると「精神を集中させて考えること」となります。恐怖心は漠然とした不安感からくる感情であり、思考をめぐらせて分析的に考えると感情が整理されるので、恐怖心をやわらげる助けとなるのです。
そこでこの時期は、本や映画、アートなどを意識を集中して鑑賞し、考察することを楽しんでみてください。この時期は心のベクトルが内向きで集中力や思考力が高まっているときなので、その力を活かして鑑賞を楽しみ、よく味わって考えることが恐怖心をやわらげていきます。考察といっても難しく考えずに、まずは感想をメモするだけでもOK。メモをすることでいろんな考えがひらめいていき、考察が深まっていくこともあるものです。鑑賞する対象はアート作品に限らず、ノンフィクションやドキュメンタリーなどでもいいですね。そうやってこの時期に感じたり考えたりしたことは、心に深く刻まれて、恐怖心を軽くするだけでなく感性を豊かにしてくれるはずです。

