いつまでも輝く女性に ranune
「かわいそうな子」と憐れまれた少女時代…母子家庭で育った年収450万円・31歳NPO職員、“600万円の借金”を背負うきっかけとなった〈高校2年の担任からのひと言〉

「かわいそうな子」と憐れまれた少女時代…母子家庭で育った年収450万円・31歳NPO職員、“600万円の借金”を背負うきっかけとなった〈高校2年の担任からのひと言〉

31歳、奨学金返済はまだ続くが“悔いなし”

現在31歳のAさんは、子ども支援を行うNPO法人に勤務している。年収は約400万円、副業として児童館で働き年収約450万円を維持しているが、決して余裕があるわけではない。

「同世代の友人には、年収1,000万円を超える人もいる。でも私は、かつての自分のように孤独を感じ、傷ついている子どもを支えたい。その子たちが『自分らしく生きていいんだ』と思えるようにしたいんです。それが過去の自分を救うことにもつながっているように思うんです」

奨学金の返済はまだ続いているが、後悔はないという。

「奨学金がなければいまの自分はいない。だからこそ、家計の事情で教育の機会を奪われてはいけない。子どもの貧困をなくすことが、未来の日本を支えることにつながる。そのためには、貧困の連鎖を断ち切る支援を社会で整えなければならないと思います」

Aさんは自分の体験を使命感に変え、今日も現場で子どもたちと向き合っている。

物価高で申請者急増も約4割が「不採用」…広がる教育格差

あしなが育英会によると、2025年度のあしなが高校奨学金の申請者数は3,217人にのぼり、過去2番目の多さとなった。そのうち、過去最多となる1,878人が採用された一方で、約4割にあたる1,339人は支援を受けることができなかった。これには、返済義務のない給付型に制度が変更されたことや物価高騰などが重なり、申請者数が増えたことが背景にある。

日本では中間層の縮小が進み、「中流の消滅」「7人に1人が最下層」ともいわれている。特にひとり親世帯の貧困率は44.5%と突出しており、母子世帯では非正規雇用が多く、安定した収入を得ることが難しい状況が続いている。

さらに、教育格差の問題は学費を支払えるかどうかだけでは済まされない。キッズドアの調査によると、受験を控えた高校3年生が受ける模試の受験料も年々値上がりしており、月1回、年間10回ほど受ける場合、受験費用だけで総額7~8万円にのぼる。

定期的な模試が受けられなければ、受験生の可能性が大きく制限されてしまうなか、この出費は重い。子どもの貧困には、こうした“見えにくいハンディキャップ”が多く存在すると指摘されている。 

生まれた環境によって進学の可否が左右される社会では、未来の人材の可能性が埋もれてしまう。これは個人の努力で解決できる問題ではなく、企業の採用難や日本全体の国力低下にもつながる構造的課題である。

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