いつまでも輝く女性に ranune
トランプ政権とイーロン・マスクの“不思議な協力関係”から見える「アメリカ社会の矛盾と分断」

トランプ政権とイーロン・マスクの“不思議な協力関係”から見える「アメリカ社会の矛盾と分断」

AdobeStock_534927941_Editorial_Use_Only
写真/Alexander – stock.adobe.com
トランプとイーロン・マスク。政治の中心で物議を醸し続ける男と、テック業界を自らのペースで揺らす男。本来なら同じ文脈で論じられない二人が、いまのアメリカでは“同じ象徴”として並べて語られてしまう。片方は過去を呼び戻す声をあげ、もう一方は未来を語り続ける。まったく逆の方向を向く二人に、なぜ同じように人々が惹きつけられているのか。その背景には、アメリカ社会が長い年月の中で静かに積み重ねてきた“ズレ”と“疲れ”がある、と久保内信行氏は語る。

新書『アメリカ合理主義の限界』は、派手な事象を追いかける本ではない。むしろ、「どうしてこうした人物の言葉が届くのか」という問いから、政治・制度・SNS・労働・文化に広がる“説明の不足”と“納得の難しさ”を丁寧に拾い上げていく。強く語る人が注目され、複雑な事情が置き去りになる社会。その構造を理解すると、トランプとマスクが“時代の象徴”になった理由が見えてくる。そして著者が示す重要な視点は、こうした変化が日本にも静かに広がっているという点だ。改革疲れ、制度への不信、SNSの偏り。アメリカの問題は遠い国の話ではなく、生活の実感に近い部分にも通じる。

今回は久保内氏に、“アメリカのいま”と“日本のこれから”について聞いた。

◆トランプ×イーロンは、いまのアメリカの「見取り図」

――まず、なぜ入り口に“トランプ×イーロン”を置いたのでしょう?

トランプとマスクは背景も立場も違うのに、どちらもアメリカを理解するための“目印”になっているからです。語る内容は真逆ですが、人々の感情を掴む力が共通している。その“掴み方”に、いまのアメリカ社会が抱える問題が表れています。二人の共闘はあっという間に崩壊しましたが、それは必然でした。

――二人はどこが共通しているのでしょう?

端的に言えば、「今のやり方に収まらない」という点です。トランプは“昔のアメリカ”を持ち出し、マスクは“未来の理想像”を提示する。方向は正反対ですが、どちらも既存の枠の外側から語る。その語りが、人々の不満や期待と結びついたのだと思います。

◆「説明が足りない国」になったアメリカ

――“既存の枠”が弱くなったのはなぜですか?

政治や制度が、かつてのように“共通の納得感”を生み出せなくなっているからです。判断だけは早く下される一方で、「なぜそうなるのか」が生活者に届かない。結果として、“理由が見えないまま物事が進んでいく感覚”が広がっています。

――それ、かなりストレスですよね。

実際、アメリカの友人と話していても、「説明されていない気がする」「気づいたらいろいろ決まっている」という言葉がよく出ます。医療や教育、働き方など、日常の多くの領域で似たことが起きており、こうした“理由の不在”が、強い語りの人を押し上げる土壌になっています。選挙や公共政策だけの問題ではなく、生活の隅々に広がる感覚なんです。


配信元: 日刊SPA!

提供元

プロフィール画像

日刊SPA!

日刊SPA!は、扶桑社から発行する週刊誌「週刊SPA!」が運営するニュースサイトです。雑誌との連動はもちろん、Webオリジナルの記事を毎日配信中です。ビジネスマンが気になる情報を網羅!エンタメ・ライフ・仕事・恋愛・お金・カーライフ…。ビジネスタイム、プライベートタイムで話したくなる話題が充実!

あなたにおすすめ