全国の生協で働くパート労働者らが12月4日、厚生労働省にパートタイム有期雇用労働法の抜本的改正を求める要請書を提出し、記者会見を開いた。
同一労働同一賃金を掲げる現行のガイドラインには罰則規定がなく、賃金や一時金、退職金に依然として大きな格差が残る実態を訴えた。
全国生協労働組合連合会(生協労連)パート部会の井坂真弓部会長は「現行のガイドラインでは、不合理な待遇格差をなくすとしながらも、何の罰則もなく、人材活用の仕組みの違いという理由で多くの格差を容認している」と指摘。法的な基準と罰則を設けた公正な処遇の実現が必要だと強調した。
退職金や定期昇給、手当などに差
生協では現在、従業員の60%以上が非正規雇用で働いている状況だ。会見では各地の労働組合幹部が、正規職員との具体的な格差を明らかにした。
大阪の生協では、冬の一時金(ボーナス)について正規職員が平均66万3327円だったのに対し、パート職員は平均12万7523円と約5倍の開きがあった。一時金の月数も正規が2.8か月分に対し、パートは0.8か月分にとどまる。
退職金も「総労働時間の係数×15円」という計算式が何十年も変わらず、正規職員とは桁違いの差となっている。
「25年働いて退職金が25万円。正規なら数百万円はあるはず」と訴えたのは、生協労連の大黒直美書記次長だ。
大黒書記次長は「60歳を迎えて少しゆとりを持って今後の人生を考えられる正規職員に対し、パートは25万円でどうやって老後を過ごすのか。働き続けるしかない」と格差の深刻さを語り、「格差是正には、ガイドラインでは不十分。法改正を求める」と述べた。
続いて、広島から出席した女性は定期昇給の格差を問題視した。
正規職員が定年まで定期昇給があるのに対し、パートは「6年間で年5円ずつ、計30円の昇給で終了」するという。
その理由を問うと、経営側から「パートの知識は6年もあれば十分身に着けることができる」と言われたといい、「どんなにスキルを磨いても、どんなに経験を積んでも、6年以降は評価されない。10年働こうが20年働こうが、最低賃金の上昇にすがるしかない」と憤りをあらわにした。
またほかの出席者からは、家族手当の格差も指摘された。正規職員には配偶者や扶養家族への手当があるが、パート職員には支給されない。「同じように働いているのに、シングルで子どもを育てているパート労働者は家族手当をもらえない。自分が奨学金の返済に苦しむ一方、正規職員の同僚は手当で子どもを大学に通わせている」との声も上がった。
「責任ある仕事をしているのになぜ」
こうした格差について労働組合側が経営側に説明を求めても、「責任や役割の違いで差があるのは当然」「法的に間違っていない」との回答が繰り返されるという。
現行法では説明義務はあるものの罰則がないため、企業側は形式的な説明で済ませ、格差が温存される実態があると見られる。
参加者の一人は「昔はパートは責任ある仕事をしていなかったが、今は違う。発注や新人教育、店舗管理まで担っている。(正規職員と)同じ仕事をしているのに、なぜこんなに格差があるのか」と疑問を呈した。
一方で前進も見られる。慶弔休暇や生理休暇については、労働組合の交渉により正規職員と同等の有給休暇扱いが実現しつつある。ただし「これらは企業側の金銭的負担が少ないから認められた。賃金・一時金・退職金といった本質的な部分は全く改善されない」との指摘もあった。
また、会見では、雇用形態別の待遇比較表も提出された。同じ生協でも地域によって格差の度合いが異なり、ガイドラインの解釈が経営者の裁量に委ねられている実態が浮き彫りになった。
参加者からは「ガイドラインには拘束力がなく、経営者の姿勢次第で大きく異なる。これでは不公平だ」との声が相次いだ。
「すべての労働者が納得できる公平な制度」求める
今回、厚労省に提出された要請書では、こうした現場の声を踏まえ、「『同じ仕事なのになぜこれほど違いがあるのか』という思いは、多くの職場で共通している」と明記。
賞与や退職金、昇給などにおける正規職員との大きな格差が「合理的」とされ、事実上温存されている現状に対し、「人材活用の仕組みの違い」を理由とした広範な待遇差の容認を、法律上明確に制限または禁止するよう求めた。
また、要請書では、生理休暇や慶弔休暇の有給休暇化など春闘・秋闘での前進を評価しつつも、子育てや介護と両立しながら働く非正規労働者が多数を占める中で、低待遇が続けば生活不安は深刻化し、その格差が「次世代にまで連鎖しかねない」として、「現行法の枠組みでは改善には限界がある」と指摘。
単なるガイドライン見直しではなく、雇用区分を理由に賃金・一時金・退職金などに大きな差をつける仕組みそのものを見直し、「すべての労働者が納得できる公平な制度」を法律として確立するよう、国に対して重ねて求めた。

