
「ガルブ」のコンセプトは榎本が好む「実験的な膨らみ、美しい曲線の追求」。無駄をそぎ落としたミニマルな世界において、あえて曲線を際立たせるための「引き算」と「足し算」を繰り返し、実験的なフォルムやバランスを丁寧に重ね合わせ、時代に左右されないタイムレスな魅力と、“今”のムードを捉えたモダンな表現を融合させたジュエリーを創り出している。
今回、建築家 石上純也氏が設計する山口県宇部市のレストラン「メゾン・アウル」で新作を発表。まるで互いの曲線美を讃えあうような空間でのデビューについて、デザイナーの榎本氏に「ガルブ」の魅力やブランドの未来について語ってもらった。
──デビューコレクションが発表されましたが、どんな気持ちですか?
今日まで頑張ったかいがありました。お披露目したものは、1年半くらい前から作ってきた、思いの詰まったアイテムばかりです。緊張感もありますがとても幸せな気持ちがあります。ジュエリーを発表するにあたり、私のように若い世代が初めて身にまとうファーストジュエリーになって欲しいという思いで制作しました。というもの、価格があまりにも高価だと手が届かないですよね。だけど、ジュエリーを身につけたいと思っている若い方々もたくさんいると思うので、手に届きやすいシルバーアイテム、そしてそこから品質のいいダイヤモンドを使用したジュエリーにチャレンジしていくようなイメージで幅広く楽しんで欲しいと思っています。
──デザインの着想源は何でしょう?
日常からインスピレーションを受けています。映画や誰かの作品を見て、ということはあまりないんです。私のジュエリーをつけた人も感性が広がるようなものを作りたいと思っていて。例えば私がつけているのは「épingle collection(エパングル コレクション)」のピアスです。これをつけている時と持った時の光の入り方が違って見える。そういう小さな“気づき”みたいなもからインスピレーションを受けることが多いです。



──ジュエリー制作において大切にしていることは何でしょう?
私自身が感じた“感覚的なこと”を大切にしています。
例えば、まち針をガムテープに貼って、それをミシンにペタッと貼っておきました。それをただのゴミだと思う人もいますよね?でも、私はそれをみて綺麗だなと感じました。その気づきがインスピレーションになるし、他の人とは違う感覚をとても大切にしています。

──初めて2026年初夏コペンハーゲン ファッションウィークに参加して得たことは?
バッグブランド「nori enomoto」としてポップアップを開催しました。ファッションウィーク期間だったので、コペンハーゲン以外の方、例えばルクセンブルク、韓国、台湾、それからフランス、スウェーデン、スイスなど多くの国の人たちがいっぱいいらして。その方々がふらっと私のショップに立ち寄ってくれてコミュニケーションが取れたことが本当によかった。日本と違って、ストレートに「このカバンは高い。なんでこんな高いの?」「デザインはすごく素敵だと思う」って直接私に言ってくれるんです。その度に、私が作業工程を動画で見せて説明すると納得して購入してくださって。こういうコニュニケーションを直接お客様と取ることが日本ではないので、とても貴重な体験になりましたし、今後につなげていきたいと思っています。

──ジュエリーブランド「ガルブ」の未来をどう描いていますか?
多くの人に見ていただきたいっていうのが一番です。同世代であるZ世代
にスタートアップとして選んでいただけるようなものづくりをしていきたいと本気で思っています。 来年は百貨店のポップアップ、そしていつか常設展をオープンできたらいいなと考えていて。マリッジリングや、誰かの大切な日、記念日のオーダーメイドジュエリーにも興味があるので、人生に寄り添うようなジュエリーを展開していけたらうれしいです。今日はちょうど新月ですし、新しいスタートには最高だと聞いています。今日お披露目できてホッとしている部分もありますが、これからどんどん発表していきたい作品がすでにあるので、早く皆さんのお手元に届くよう、そして私自身の夢を実現していきたいと思っています。
7つのテーマからなる今回のコレクションは、ピアスを中心にイヤーカフ、ネックレス、ブレスレット、リングなど幅広いラインナップ。ぜひ、ホリデーのギフトにチェックしてみて。
text: Miyuki Kikuchi
