男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
—あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?
誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。
さて、今週の質問【Q】は?
▶前回:結婚相談所で出会い無事に成婚。しかし、31歳の女が婚約破棄を申し出た理由とは
一体、どこで間違えたのだろう。
「裕也くん、これとかいいんじゃない?」
「どれどれ?」
最近乾燥が気になるので、僕は加湿器を探していた。それを知って葵が自分のスマホで加湿器を検索し、良さそうなものを見つけてスマホの画面を僕に見せてきた時のこと。
画面の上に、一通のLINEメッセージが入った。
― Ken:葵ちゃん、昨日はマジで楽しかった。次はいつ会う?
まずいと思ったのか、すぐにスマホの画面が僕の目に入らないようにした葵。でも、僕は見てしまったし、変な男からのメッセージが脳裏にこびりついて離れない。
「葵…さっきの、誰?」
「いや、違うの。これは…」
結局、葵の気持ちは、その男性にうつっていたことが判明し別れることになってしまった。交際3年目の冬になるところだった。
Q1:交際当初から垣間見えた、男の性格は?
葵とは、行きつけのバーで出会った。
当時、僕は三茶に住んでおり、近所のバーが友人との溜まり場のようになっていた。そのバーの常連だった友人が、連れてきたのが葵だった。
初対面の葵の印象は、「よく飲み、よく笑ういい子だな」というものだった。その後、何度か店で遭遇するうちに親しくなり、店以外でも二人で会うように…。気がつけば、交際に発展していた。
当時葵は31歳、僕は30歳で、まだお互い若くて元気もあった。
二人とも、飲んだり食べたりすることが好きだったので、週末は近所の美味しい店を開拓したり、家で昼過ぎから手の込んだ料理を作って明るいうちから晩酌したり…と、一緒に最高に楽しい時間を過ごした。
もともと気の合う僕たちだったけれど、僕が葵のことを大好きになった理由は、他にもたくさんある。
葵はとてもまっすぐでいい子で、僕を尊重してくれる。
交際を始めた時、僕は有名建築家が代表を務める建築設計事務所に勤めていたのだが、ちょうど転職活動を始めた時期でもあった。
ただ独立するか、別の事務所に入るのか、結構悩んでいた。
「裕也くんなら、大丈夫」
そんな時、葵の存在に何度も助けられた。
「葵、ありがとう。この転職が上手くいったら、もう少し落ち着いた生活ができると思うから」
「うん、頑張って。信じてる。それに何かあっても、私がいるから大丈夫だよ。最悪、私が食べさせてあげるよ」
そう言いながら笑った葵の笑顔が眩しくて頼もしくて…。感謝しかない。何よりも、看護師として働いていた葵の存在は相当心強かった。
「葵と付き合えて良かった。本当に、最高の彼女だよね。ありがとう」
感謝の気持ちは口に出していたし、お互いに不満はなかったはずだ。
結局、僕は別の事務所へ移ったのだが、それを機に僕は目黒へ引っ越し、少し家が広くなった。
そのタイミングで葵も僕の家にいる時間が長くなり、半同棲が始まった。
ただ僕の家に荷物は置いているものの、新富町にある葵の家は残したままだった。新富町と目黒は、電車のアクセスも悪く近いようで遠い。実際、行き来するのは少し不便そうだった。
「葵、いっそのこと、ここで一緒に住まない?」
完全同棲の提案は、僕にとって、とても大きな意味を持っていた。
今まで過去に付き合っていた女性にも、「同棲しよう」なんて言ったことはない。
自分の時間が奪われそうだし、他人が家にいるのが苦手だから。でも葵とは何となくこの先もずっといる気がするし、一緒にいて苦にならない。
だから思い切って提案したのだが、葵からはクールな言葉が返ってきた。
「でも一応、自分の家は残しておこうかなと思って。職場もあっち側にあるし」
「そっか。葵のそういうところ、好きだよ。お互いのプライバシーを尊重できる関係っていいよね」
過度に干渉もしてこないし、お互いの家があるので、最悪ケンカをしても別々で過ごせる。お互い自立しながら、非常にバランスよく過ごせていた。
― 葵って、理解のある彼女で居心地が良いな。
そう思っていた。
Q2:女が交際3年で、他の男性へ目移りした理由は?
気がつけば一年が経ち、二年が経ち…。時が過ぎるのはあっという間で、僕たちは一緒にいることが当たり前のようになっていた。
そんなある日のこと。土曜の昼間、家でスマホの動画を見ながら横になっていると、葵がソファを覗き込んできた。
「裕也くん、今夜何食べたい?」
「うーん。何でもいいな」
「じゃあ久しぶりに、腕振るっちゃおうかな」
「本当に?楽しみ」
宣言通り葵は一生懸命準備をしてくれて、夕方になると、豪勢なディナーが完成していた。
「これ、全部葵が作ったの?すごくない?」
ダイニングテーブルの上には、ずらりと料理が並んでいる。
「へへ。久しぶりに二人で週末ゆっくりできるから、張り切っちゃった。奮発して、良いワインも買って来たんだよ」
「え〜ありがとう。本当に最高だよ」
たしかに、最近忙しくてなかなか二人でゆっくりできる時間がなかった。葵の作ってくれた美味しい料理を食べながら、グラスを傾ける。最高の時間だった。
しかしちょうど食事や飲みが落ち着いたタイミングで、学生時代の親友から連絡が来た。
「ごめん葵。タカシから連絡があって、今近くで飲んでいるらしくて、顔出さなきゃかも」
「今から!?」
「アイツ離婚したばかりだから。話を聞いて欲しいんじゃないかな。行って来てもいい?」
一応すべて食べ終わってもいるし、テレビを見ながらワインを飲んでいる。それに時間はまだ22時前だ。
「いいけど…今からって。裕也君自身もだけど、周りも自由な人が多いよね」
「そう?男飲みなんて、こんなものじゃない?」
「わかった。早く帰ってきてね」
しかし結局、タカシと合流したら盛り上がってしまい、帰宅したのは午前2時だった。
葵にはこまめに連絡を入れたし、もちろん変なことは何もしていない。
それに、葵はそんなことをうるさく言うような彼女ではないし、僕が一度飲むと遅くなるのは知っている。
この日も、そーっとドアを開けて家へ帰ると、既に葵は寝ていた。
その翌日、一応葵の機嫌をうかがいながら…他に女性がいたわけではなく、本当に男飲みだったことを証明するために、昨晩の会話を遅めのブランチを食べながら共有する。
「タカシの元奥さん、結構強烈だったみたいで。財産、ほぼ取られたらしい」
「何で?よっぽど、タカシさんが悪いことしたの?」
実は、タカシが浮気をしたらしい。それは聞いたけど、なんとなく葵には黙っておこう。
「それはわからないけど…女性って怖いよね。結婚したら豹変するって言うし。親権も取られちゃったらしい」
「そっか…。それはタカシさん、落ち込んでいるね」
「そうなんだよなぁ。でもやっぱり、結婚はリスクあるし、子どもいるとさらに大変そうだから、絶対に今はいらないな」
「そうなの?」
「え、葵は欲しいの?子ども」
「それはわからないけど…。年齢的にもそろそろ真剣に考えないといけないしね」
「女性は大変だね」
まだ僕は33歳だし、仕事も忙しい。葵との結婚は、もう少し落ち着いてからにしようと考えている。
「まぁ僕たちは、もう少し落ち着いたらだね」
「そっか」
そんな会話をして、この日は終わった気がする。
しかし、この数ヶ月後、葵が他の男性と会っていることを知ることになる。結局、葵は僕に見切りをつけたのだ。
3年という期間は長いし、もはやほぼ事実婚状態だったと思う。
それなのに、どうして葵は他の男のところへ行ってしまったのだろうか…。
▶前回:結婚相談所で出会い無事に成婚。しかし、31歳の女が婚約破棄を申し出た理由とは
▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
▶NEXT:11月23日 日曜更新予定
女が三年の交際にピリオドを打った理由は?

