◆“女性専用車両”で目の当たりにした押し合い

通勤、帰宅ラッシュは日常で、「男性と体が触れるのはイヤ」と感じていたため、田中さんは常に“女性専用車両”を利用していた。
最悪なことは、電車が何かしらの理由で遅延した日だったという。
「ホームは人で溢れ、満員の車両に押し込まれます。“潰れるんじゃないか”って思うほどでした」
田中さんの目の前には妊婦が立っていた。
◆妊婦を押す乗客…赤ちゃんを守ろうとして踏ん張った
妊婦はリュックに“マタニティーマーク”をつけ、体を横にして必死にスペースを確保していたそうだ。それでも周囲は誰も声をかけなかった。
「私は、“この人だけは押さない!”って決めて、壁になりました。足に力を入れて踏ん張って、後ろからの圧を全部止める感じでした」
しかし、問題は妊婦の真正面にいた40代くらいの女性だった。
「睨みながら押すんです。“邪魔よ”って態度で、仕方なく押される感じじゃなくて、悪意がある押し方でした」
田中さんは腕を伸ばし、妊婦のお腹の前に“バリケード”をつくったという。
「これ、“女性専用車両”ですよ。女性同士で妊婦に対してこんなにも冷たいのかと、ショックでした」
また、会社や社会への怒りも同時に込み上げてきたようだ。
「そもそも“大きなお腹で満員電車に乗らないといけない状況”って、どうなんですかね……」
田中さん自身が仕事を辞めて子どもを産んだ今でも、あの日の光景は忘れられないという。
「女性専用車両は、“女性同士だから助け合える”場所じゃなく、ただ“同じ性別の人”がいるだけでした」
電車では個人のマナーが大いに問われる。だが、不快に感じても声をあげにくい空気があるのは事実だ。自分の何気ない行動が周囲の迷惑になっていないか、あらためて意識する必要があるだろう。
<取材・文/chimi86>
【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。

