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「明日からイタリア旅行」何カ月も前から仕事を頑張っていた編集者。出発前夜、先輩の〈悪意〉で泣く泣く有休をキャンセルしたワケ…日本の職場の“異常な”嫉妬心

「明日からイタリア旅行」何カ月も前から仕事を頑張っていた編集者。出発前夜、先輩の〈悪意〉で泣く泣く有休をキャンセルしたワケ…日本の職場の“異常な”嫉妬心

2023年、GDPで「休むのが大好きな」ドイツに抜かれた日本。その敗因は、「他人が休むと許せない」という、歪んだ嫉妬心にあるのかもしれません。本記事では、サンドラ・ヘフェリン氏の著書『有休取得率100%なのに平均年収が日本の1.7倍! ドイツ人の戦略的休み方』(大和出版)より、日本の職場の根深い構造を、ドイツの視点も交えて解説します。

日本でフレキシブルな働き方をする人が出世しない理由

日本では、会社に所属している人は、「専業主婦の妻のいる男性」、つまりは家事や育児をしない男性と同じレベルで長時間働くことが長年デフォルトでした。そういった中で「公平」というものを考えるとき、どうしても「仕事を中心に生活すること」を前提に考える人が多いのです。したがって日本では、フルタイムでない働き方の人が出世することはまずありません。フレキシブルな働き方をする人が出世すると、周囲からすぐに「ズルい」という声があがるからです。

その際、お約束のように「あの人は働いていないのに優遇されている」などと言われますが、こういったものは「周囲からの評価」ではなく「周囲からの嫉妬」だと感じます。しかし、その嫉妬は「自分で自分の首を絞める」ということにもつながってしまいます。なぜなら、「他人がフレキシブルに働いている」ということは、「自分自身も近いうちにフレキシブルに働ける日も近い」ということだからです。

かつて有給休暇がなかなか取れないことで知られていた、日本のある雑誌の編集部の話。編集部員であるAさんは、クリスマスから年末にかけてイタリアに住む友達に会いに行くために、何カ月も前から仕事を頑張っていました。周囲にも頭を下げながら有休を取ったものの、出発の前日になって、先輩から急な仕事を振られたそうです。それが明らかに部下にイタリアへ行くことをキャンセルさせるためにやった意地悪であったこと。

数年前の話ではありますが、これは日本の常識で考えても「明らかに問題のある話」ではあります。陰湿ですし、今はパワハラだと言われてしまうでしょう。

休むことは、生理現象と同じ

「仕事を振られ、泣く泣く有休をキャンセルした」というエピソードを、あるドイツ人に話したところ、その人は暫く絶句したあと、こう言いました。

「人が休むことを妬むなんて……。休みたいというのは、トイレに行くのと同じような生理現象だと思う。そんなことが妬みの対象になるのは人間として完全に壊れている」。これを聞いて、その通りだと思いました。よく人間の三大欲求として、食欲・性欲・睡眠欲が挙げられますが、広い意味で考えれば、「有休を取って思う存分休むこと」も、後者の「睡眠欲」に入るでしょう。人間、立ち止まって休むことと、思いきりリラックスして時間を気にしないで眠ることは、やっぱり必要なのです。

実践できること:連携してでも有休を全部取る

繰り返しになりますが、有休は全日消化する方向で考えたほうがいいでしょう。その際にほかの人とも連携して、みんなで「有休を取る」という流れに持っていくことができれば一番。仕事仲間と一緒に食事をすることもあると思いますが、そんなときに、世間話に終始するのではなく、「休むこと」に話を持っていき、共感してくれた人を中心に「みんなで有休を取るようにしよう」と結束できれば最高です。社内で「有休を取ることは大事」だということを徐々に広めていきましょう。それがゆくゆくは、大きな動きにつながるかもしれません。

サンドラ・ヘフェリン

コラムニスト

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