
ドイツでは、「出張に有休をつなげる」ことや、長い休暇を取ることが、ごく自然に受け入れられています。こうした「しっかり休む」文化が、結果として高い生産性に繋がり、日本のGDPを逆転する一因となったのかもしれません。本記事では、サンドラ・ヘフェリン氏の著書『有休取得率100%なのに平均年収が日本の1.7倍! ドイツ人の戦略的休み方』(大和出版)より、ドイツ人の「仕事」と「休み」に対する、合理的な考え方を紹介します。
ひそかに「ヨガ休暇」がブーム
このように話を聞きました。
「最近ドイツではヨガが流行っているわね。会社によっては、就業前の朝の時間帯に、社員用のヨガ教室を設けているところもある。前に話したように、私の顧客にヨガの先生がいるけど、彼女はヨガの先生として生徒たちと一緒にスペイン、イタリア、ギリシャなどのリゾート地に行って、そこで何週間も毎日ヨガをやるの」
こういったコースはYoga Retreat と呼ばれ、自分を高めたいと考える人の間で人気です。
一昔前だと「南の島でゴロゴロする」のがドイツ人の典型的な休暇の過ごし方でしたが、近年はドイツでも健康志向の人が増えました。ヨーロッパの南の国は、観光や海水浴もできるYoga Retreat として人気とのことです。スペイン、イタリア、ギリシャであればドイツからそう遠くないため、移動の負担もかかりません。
そして多くのYoga Retreat は「3週間」です。つまり、「仕事から離れて本当に日常生活からの回復を図るためには3週間必要」と考えるドイツ人は多いのです。ヨガをしながら、1週間目は雑念から離れることに集中し、2週間目にエネルギーを感じ、3週間目に生まれ変わったかのように心身ともに元気になる……聞いているだけで、元気が出てきそうです。
出張と有休をつなげて休暇を満喫する
ノラさん(※)の場合はヨガではなく、旅行です。
※ノラさん(Nora さん、40代。女性)、ミュンヘン在住。税理士事務所を経営、自宅兼オフィスで勤務。ノラさんの夫(当時は彼)が海外への出張の際、出張に有休をつなげていました。そこにノラさんも同行して海外で休暇を楽しんでいたようです。
「やっぱりよかったのはカリフォルニアとハワイね。夫(当時は彼)が仕事をしている間、私は1人でショッピングに行ったり、よさそうなお店を散策。彼の仕事が終わってから何日か現地に残って2人で休暇を楽しんだわ」。
ここでもまた「文化の差」が見て取れます。ノラさんが言っていたように「出張が終わってから、現地で休暇を過ごす」というのはヨーロッパの感覚だと「アリ」なのです。したがって、会社員が、例えば外国で5日間の出張をする場合、それに有休をつなげて何日か現地に残ることも、多くの会社は許可しています。
部下の“合理的”な有休申請に、日本人上司が激怒
もちろん有休の期間に関しては、宿泊代は自費ですが、スケジュールさえ許せば、会社側も「楽しんでおいで」という感覚なのです。ところが外国人が何人か働く、ある日本の会社では、これがちょっとした問題になってしまいました。
海外出張が多かった部署で、ある外国人が「出張先にとどまって有休を何日かつなげていいか」と日本人の所属長に確認したところ、所属長はその確認自体にご立腹している様子でした。しばらく経ってから、所属長は「出張は遊びではありません!」と言ったのです。
しかし、その所属長は英語ができず、海外出張の機会はあまりありませんでした。このことから、もとより仕事で行くのに「海外に遊びに行けて立派なご身分」というような妬みが根底にあるように感じ取れます。でも、当たり前ですが、「あれをやってはダメ。これをやってはダメ」という会社では多様な人材は根付きません。
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト
