地域外交・国際的な課題に積極的な取り組み
外交面では国益を重視した独立的かつ能動的な外交を基本方針としています。その外交理念に基づいて、ASEANを重視した地域外交、国際的な課題への対応に積極的に取り組んでいます。最近では2022年にはG20議長国、2023年にはASEAN議長国を務めました。
■インドネシアと中国、「国交樹立後」の主な外交関係
インドネシアと中国は1950年4月13日に国交を樹立しました。その後10年余は順調に外交関係が発展していきましたが、1965年に「9・30事件」が発生し、1967年に外交関係を中断することとなりました。その後、東西冷戦が終結すると、1990年8月に外交関係を回復し、2005年には戦略的パートナーシップを確立、2013年には包括的戦略パートナーシップに格上げすることで合意しました。
その後の両国関係は改善傾向にあります。インドネシアは南シナ海のナトゥナ諸島を巡る問題で中国とにらみ合う関係にありますが、2018年には一帯一路と、ジョコ・ウィドド大統領が海洋経済の発展を目指して2014年に提唱した「全球海洋支点(Global Maritime Fulcrum)」を共同で建設することで合意しています。また2021年には「両国双園(相互に工業団地を設立し商工業の協力を深める趣旨)」の覚書にも調印し、企業誘致説明会を共同開催したりしています。
次期大統領に決まったプラボウォ氏(就任は2024年10月)は、初めての外国訪問先として中国を選びました。ただし直後に日本を訪問するなどバランスをとることとなりました。
なお、米軍とはガルーダ・シールドと呼ばれる合同軍事演習を行っています。しかし、イスラム教徒が多い国なので、イスラム教徒が大宗を占めるパレスチナへの共感から、イスラエルに対する反感が根強くあり、イスラエルの後ろ盾である米国と対立する面もあります。
実際、2023年に米国で開催されたAPEC首脳会議では、その終了後にイスラエルとハマスの即時かつ持続的な停戦を求める共同声明をマレーシア、ブルネイとともに公表しました。ちなみにガルーダとはインド神話に登場する神鳥で、インドネシアの国章にも採用されているものであり、ガルーダ・シールドにはインドもオブザーバー参加しています。
「親中」と「反中」が同率!…対中国観は“それほど悪くない”
インドネシアと中国との間には長い交流の歴史があり、世界で最も華僑が多い国なので、中国文化に対する親近感もあります。ただし、インドネシアはイスラム教徒が多く、共産主義のタブー視もあるので、インドネシア社会の対中国観はやや複雑です。
インドネシアの世論は親中と反中が拮抗しています。ピューリサーチセンターの調査結果を見ると(図表3)、中国のことを「好ましい」と回答した人が36%、「好ましくない」と回答した人が36%でした。
[図表3]インドネシアの親米・親中分析 出典:Pew Research Centerのデータを元に筆者作成
一方、日本外務省が2022年に実施したアンケート調査の結果を見ると(図表4)、「現在、最も重要」との回答でも「最も信頼できる」との回答でも、中国は日本と並ぶ高水準にありました。
したがってインドネシアの対中国観はやや複雑ですが、それほど悪くないというのが現状と考えています。
[図表4]インドネシアにおける中国・主要国の認識 出典:日本外務省のデータを元に筆者作成
他方、前述の調査で米国に対して「好ましい」と回答した人は42%、「好ましくない」と回答した人は32%と、差し引きプラス10ポイントでした。世論はやや親米と言えるでしょう。ただし日本の世論ほど親米意識が高くない点には留意する必要があります。
