◆信仰以外の生き方を知らなかった
――人をいらつかせる態度の根底には、生育歴があるのでしょうか。みるくま:わりと常にオドオドしてしまうからでしょうか。主に母がヒステリックな性格だったこともあって、相手の顔色を伺いすぎる傾向はあるかもしれません。エホバの証人は「愛しているからこそ、我が子にはムチを」という思想が強くて、私も幼いころから布団たたきなどで叩かれて育ちました。
信仰とは別に、父も子どもに対する愛情のかけ方がわからない人なので、「お前が生まれて、邪魔だと思ってる」と言ってきたり、首を絞めるなどの暴力はありました。なるべく人を怒らせないように生きてきたのは関係するかもしれません。
――さまざまな不都合はあれど、成人するまで信仰を続けていますよね。しかし、一度は排斥になったと聞きました。
みるくま:信仰を続けたというよりは、それ以外の生き方を知らなかったと言ったほうが正しいかもしれません。排斥になった原因は複雑なのですが、広くいえば恋愛でしょうか。短大時代、初恋の人ができました。エホバの証人は婚前交渉を強く禁止しており、私もそれを守っていました。しかし交際をよく思わない親によって、彼氏とは別れさせられてしまったのです。その後、親への怒りから、親がもっとも悲しむことをしようと考え、夜の世界に飛び込みました。ただ罪悪感から親にそれを打ち明けてしまい、それがエホバの証人の長老たちの知るところとなって、排斥に至りました。
――排斥はどのくらい重い処分なんでしょうか。
みるくま:死刑宣告みたいなものですね。会社だと懲戒解雇とかでしょうか。とにかく、本来は家族であっても話しかけるのは厳禁というような処分です。
◆“排斥後”の両親の反応は…

みるくま:そうですね。ちょうど私が双極性障害を患ったこともあって、例外的に家のなかでケアをしてはくれていましたが、母は事務的な会話のみ受け付ける感じで、父は「どうしてそんなことをしたんだ」と呆れていました。母からは「自分の娘を汚らわしいと思わなければならない親の気持ちがわかるの?」と言われたのを覚えています。
――そこから家出までは、どのような経緯でしょうか。
みるくま:病気療養中、SNSでショート動画をよく見るようになりました。同年代で精神疾患を告白している配信者もいて、「自分の置かれた状況を私も配信してみようかな」と思えました。動画を投稿するようになると、応援してくれる人が増えて、徐々に家庭のことなどを開示していくようになりました。「応援するから、家から逃げたらどうか」と言ってくれる人も多くて、勇気をもらえたので、家を出た感じです。
全財産が60万円しかなかったので、2〜3ヶ月は精神障害者用のグループホームに入所し、保育士の資格を持っているので働きながらお金を貯めて、ひとり暮らしをしました。

