◆信仰そのものが悪いとは思っていないが…

みるくま:排斥後、一度エホバに復帰しているので、母の落胆はすごかったと思います。家出後すぐは、まさに鬼電という感じで。また、投稿した動画を見て怒っている旨のLINEが来たりもしました。ただ最近は、「考えてみたらあなたも25歳だもんね」と理解を示してくれるまでにはなりました。一時的に実家にものを取りに行くような関係性にはなっています。
――いま、ご両親や宗教に対して思うことはありますか。
みるくま:私は信仰そのものが悪いとは思っていなくて、宗教の存在意義も肯定的に捉えています。ただ、私のような家庭で育つと、信仰をするかしないかを本人が決めることは困難であり、宗教を中心に生活が回るようになってしまいます。そうなると、外の世界を見たいと思ってもそれを成し遂げるのは不可能に近いと思います。子どもは少なくとも、親と違う道を選択する権利があるんじゃないかな、と私は考えています。
母についても、世の中の基準でいう毒親となってしまうのかもしれませんが、根底にあった愛情は本物だったと思います。神の教えを通して、私を幸せにしたいと本気で考えてくれていたと思います。
翻って、私はいま幸せです。過去には自殺未遂もしましたが、いまは配信を楽しみにしてくれている多くの人たちのおかげで、楽しい毎日が過ごせています。家出という強硬手段ではありましたが、結果的にすべてがうまく噛み合ってきたと思っています。
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その空間でしか通用しないルールであっても、強固に人を縛り、ときに人生を狂わせるものがある。遠く離れていれば一笑に伏せるほどの荒唐無稽なものが、なかにいる誰かの人生に濃い影を落とす。自分の人生は自分で決める――それを当たり前だと笑えることが、どれほど幸せだろうか。みるくまのしっぽさんの生き方がそれを教えてくれる。
<取材・文/黒島暁生>
【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

