いつまでも輝く女性に ranune
大阪から新潟への夜逃げ、5歳の私が見た「知らない女性」の正体。父の不倫相手が同居する地獄絵図

大阪から新潟への夜逃げ、5歳の私が見た「知らない女性」の正体。父の不倫相手が同居する地獄絵図

◆「知らない女性」の正体は……?

彼女の名前はKとしよう。Kはニコニコと「これからよろしくね」と言った。何がよろしくなのかもわからないし、そもそもお前は何者なのだ、という恐怖の方が強かった。そのあと、母たちが合流してからもKは家にいた。朝はTシャツとハーフパンツ姿という出たちで、のそのそと起きてくるとコーンフレークを食べていたのをよく覚えてる。彼女が食べていたからなのか、なんとなくコーンフレークは嫌いだ。

勇気を出して母に「あの人はなに?」と聞いたけれど、「お父さんの知り合いの女の人」という答えが返ってくるだけ。普通の家に「知り合いの女の人」が急に居候したりするのだろうか。

とにかく、私はKが嫌いだった。理由はわからない。言葉にするなら嫌悪感が近いのかも知れない。あと、彼女だけ違う扱いだったのも気に入らなかったのかもしれない。子どもたちと母は狭い部屋でみんなで寝ていたのに、Kはなぜか自分の部屋があった。新居で自分の部屋があるのはKと父と祖母だけだった。

◆“モテるアピール”が気持ちが悪かった

ときどき、Kの部屋に入っていく父の姿も見たことがある。要は不倫相手が自分の家に住んでいたということなのだろうか、と思うけれど、このことに関しては大人たちは揃って口を噤むので真相は分からずじまいだ。

ただ、父は嘘か本当か、よく「お前たち以外にも外に子どもがいる」と言っていた。自分は若い女性にモテるのだとも言っていた。子ども心にそれがなんだというんだろう、と思っていたけれど、今思い出すと反吐が出るほどに気持ちが悪い。むしろ、そんなことに気がつきたくなかった。

これで仕事ができるなら良いけれど、会社を作ってはつぶし、作ってはつぶし、自己破産もしていた。嘘か本当かどうかは知らないけれど、部下にお金を持ち逃げされたこともあるらしい。仕事ができないだけではなく、人を見る目もないのだろう。

これでせめてつつましい生活を心掛けてくれたらよかったのだけれど、父はそうではなかった。子どもたちにお金で苦労させながらも自分は常に好き勝手やっていたのである。

<TEXT/ふくだ りょうこ>

【ふくだ りょうこ】
大阪府出身。大学卒業後、フリーランスのライターとして執筆活動を開始。ゲームシナリオのほか、インタビュー、エッセイ、コラム記事などを執筆。やせ型の夫とうさぎと暮らしている。X:@pukuryo
配信元: 日刊SPA!

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