◆「台湾の法的地位を認定する立場にない」高市首相の発言に中国が反発したワケ

すると、「中華人民共和国駐日本国大使館」のXが、サンフランシスコ平和条約に対して「不法かつ無効」と評しましたね。
今回論点に挙げられたこの条約は、1951年に第二次世界大戦の連合国諸国と日本の講和条約で、日本の主権回復を認めるとともに、「領土の規定」および「賠償責任」について調印されました。
そして、「領土の規定」の項目に、「台湾・澎湖諸島の放棄」があったんです。
「あれ、台湾を統合したい中国にとって、日本が放棄するサンフランシスコ平和条約は、むしろ認めたほうがいいじゃないか」と感じた方も多いのでは。
ですが、「日本は『サンフランシスコ平和条約』で台湾に関する権利・権限を放棄しており、台湾の法的地位を認定する立場にない」とする発言を認めた場合、裏を返せば「1951年までは台湾の主権を有していたよ」とも読めてしまうことが問題なんです。
中国の立場としては、「台湾は、1945年からずっと中国の一部」とするものですから、「1951年までは日本が有していました」とも読める主張を放置すると、「6年間の空白期間」が生まれてしまう。
だから、当時の国際情勢的に中国やソ連などが講和しなかったことを盾に、「不法かつ無効」としているのですね。
◆国際政治を読み解くカギ
緊張する日中関係ですが、読み切るには連綿と続く歴史的な事情や背景を知る必要があります。「難しいから」と敬遠されがちな政治の話題ですが、こういった歴史的背景を読み解きつつ、それぞれの立場を整理していくと、実は非常にシンプルになるケースだってあるんです。
今回私は改めてそれぞれの主張を整理しながら、「一貫性」を保ち続けるための、様々な人々、国々、機関の努力を垣間見ました。
思想的な善悪の判断や利害の有無を一度放り出して、「それぞれができる限りの主張をしているフラットな空間」としてみると、こんなにハイレベルかつ面白い議論が行われている場は、なかなかありません。
もちろん、受験でも時事ネタはよく問われます。そろそろ2月が近付いてきた頃合いですが、勉強にも、勉強の息抜きにもなる国際政治の世界を、親子で一度のぞいてみてはいかがでしょうか。
<文/布施川天馬>
―[貧困東大生・布施川天馬]―
【布施川天馬】
1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネ」スタイルの勉強法を学生たちに伝えている。MENSA会員。(Xアカウント:@Temma_Fusegawa)

