50代の体と心の変化、そして“今”を受け入れる
実は、母のおいなり屋を手伝い始めた頃から、うんたさんの体には変化が現れ始めていました。
「絵を描く方の手の指が痛むようになり、ペンを長時間握ることできなくなってしまったんです。BL漫画家として第一線を張るような働きは厳しいのかなと。でも、おすしを握るのは絵を描くのとは違う動きなので手が動かせたんですよ」
体の不調を抱えながらも、これまでの本業の漫画は 「無理のない範囲で続けよう」と考えをシフトできたことが、結果的に新しい働き方につながりました。
「今はおいなり屋さんがメインで漫画は兼業のバランスです。そこにコミックエッセイという新しいチャレンジも。コミックエッセイは観るのと描くのでは大違い。密度が高くて大変だけど、やっぱり少しでも漫画とは関わっていきたいですから」
更年期による心の揺らぎにも向き合いました。
「私の更年期は、更年期うつから始まったんです。夫が仕事に行って帰ってくるまで、座椅子に座って一歩も動けない日々が続きました。なぜだろうと、SNSでつぶやいたら、先輩たちから『更年期うつじゃない?』『命の母を飲んでみて』とアドバイスが。
すすめられて「命の母」を飲んでみたら、効果抜群で1週間くらいでうつ抜けしました。そのときに、不調はいつか終わるって思えて、ほっとしました」
と、うんたさん。そして、いろんなことを『覚えておこう』と思うようになったと言います。
「自分の成長過程を覚えておいて損はないですよね。ダメな自分をいっぱい覚えておこう。そうすれば人に優しくできるから」
共感が力になる――コミックエッセイが教えてくれたこと
うんたさんが最初にコミックエッセイに惹かれたのは、けらえいこさんの『一緒にスーパー』でした。
「結婚生活や日常の話なのに、何度読んでも笑ってしまいすっかりハマりました。自分の体験をこんなにエンタメとして面白く描くことができるなんて! それに読み手が体験してないことでも追体験できるんです」
講座を担当した編集者の松田紀子さんも、こう語ります。
「自分の身の回りのこととか自分の人生を描いていくことって、伝えること自体に価値があると思っているんです。講座でも、デビューはとりあえず脇においといて、今持てる力の限りを課題にぶつけてほしいなと思っています。
その結果、描き切ったという達成感や、このテーマを描くことで自分自身を見つめられるようになった肯定感みたいなものが上がってくれるといいなと思ってやっています」
日常を描きながら、自分の人生を味わい直す——。それがコミックエッセイの一番の魅力だと感じています。
松田さんは、編集者として大切にしているのは、作者が無意識に省いてしまう“本音”の部分だとも言います。
「自分がどう感じたかを端折ってしまう人が多いけれど、実はその端折ってしまった自分の気持ちこそ、みんなが読みたい、知りたいという価値だということがよくあります。一番最初に原稿を読む読者として、そこをいかに紡ぎ出していくかが編集者の役割かなと思っています」
うんたさんにとってコミックエッセイは、母との時間や自分の気持ちを、丁寧に言葉と絵にしていく時間でもあります。
そして、編集者とのやりとりの中で、「こんなことを感じていたんだ」と気づいたり、つい省いてしまいがちな気持ちが浮かび上がったり。
そうして生まれた作品を読む私たちは、誰かの体験の中に、ふと自分の思いや人生の一場面を重ねていきます。
——描く人、支える人、読む人。それぞれの想いがふわりと重なりあって、コミックエッセイは“人と心をつなぐ場所”になっているのかもしれません。
はちみつコミックエッセイとは

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