適した環境・置き場所
一日中日光が当たる日なたの水はけのよい場所が適します。雨が降ると水が溜るような排水の悪い場所は避けてください。水はけがよければ、あまり土壌を選ばず育ちます。
また強風がよく当たる場所は嫌いますが、風通しのよい環境を好みます。風通しが悪いと、病害虫の発生が多くなります。
生育温度
15℃以上の温暖な気候が適し、5~10月が生育期の目安です。暑さにも強く、夏の暑さで弱ることはほとんどありません。
キンカンの植え付け・植え替え

用土
比較的用土を選びません。多くの植物に使える一般的な培養土を使うとよいでしょう。
植え付け(地植え)
植え付けの適期は、3月下旬~5月上旬です。植え付け1~2週間前に、直径・深さが共に50cmくらいの植え穴を掘ります。掘った土に化成肥料200g、掘った土の3割くらいの量の堆肥か腐葉土を加えてよく混ぜ、植え穴に埋め戻します。
苗木は根を軽くほぐし、接ぎ木部分が埋まらないようやや浅めに植え付けてください。また水やりすると植え穴部分の土が沈むので、やや高めに植えるようにします。水をたっぷり与え、支柱を立てて完成です。
鉢植えの植え替え
生育が旺盛なので、1~2年に1回、3月下旬~5月上旬に植え替えをしてください。根鉢の底の部分を軽くくずし、一回り大きな鉢に植えます。
キンカンの育て方・日常の手入れ

水やり
鉢植えは、鉢土の表面が乾いたら水やりしてください。
地植えした場合は、根付けば水やりはほとんど不要です。ただし夏に雨が長期間降らず、土を5cmほど掘り返しても乾いている場合は水やりしてください。夏に乾燥しやすい場所では、敷き藁などのマルチングをするとよいでしょう。
肥料
果実が多くなるので、木を弱らせないように肥料を与えてください。
鉢植えで育てている場合は、芽が出る前の寒肥として2~3月、開花前から開花初期の6~7月、果実が肥大を始める9月に、3要素が等量の緩効性化成肥料や、骨粉入り油粕を与えてください。
地植えしている場合は、2~3月と9月に肥料を与えればよいでしょう。
注意する病害虫
適地で育て剪定を適切に行えば、病害虫の発生は非常に少ないです。
日当たりや風通しの悪い場所や、枝葉が密生するとカイガラムシやアブラムシが発生しやすいです。カイガラムシは、見つけ次第早めに水を強く当てるなどして落とします。アブラムシは、オーガニック栽培で使用できる薬剤で比較的防除しやすいです。
よく日光に当て、周囲に密集して植物を置くのは避けてください。また剪定等も適切に行い、予防に努めることが大切です。
キンカンの手入れ作業

剪定
自然に形が整いますが、枝が密集して付きます。そのまま放っておくとカイガラムシなどの害虫が発生しやすく、果実の品質も悪くなりがちです。3~5月に、木の内部まで日光が当たるように間引き剪定するとよいでしょう。
摘果
9月以降に全体の半分くらいを摘果すると、実が大きくなります。また摘果しないと、翌年実がつかない場合もあります。小さな実から摘果して大きな実を残し、実が密集して付きすぎている部分も多めに摘果してください。目安として10~15cmの枝に2~3個の果実が付くようにします。
キンカンの収穫
果実が黄色くなれば、収穫できます。できるだけ樹上で完熟させると甘味が強くなります。ただし霜に当たると果実も傷むので、寒い地域は早めに収穫するか、鉢植えは室内の日当たりのよい場所に移動するとよいでしょう。
花も実も、健康効果も。キンカンを育てて楽しむ「実り」のある暮らし

キンカンは丈夫でよく実がなり、初心者にもおすすめの柑橘です。鉢植えでもよく育つので、ベランダなどで栽培を楽しむことができます。
夏頃に咲く白い花は長期間咲き続け、たくさんの黄色の果実は、暗くなりがちな秋から冬の庭を明るく彩ります。果実は栄養豊富で、樹上で完熟させた果実は甘く、育てているからこそ味わえます。また蜂蜜漬けを作れば、初期の風邪やのどによい効果が期待できる飲み物としても美味しく味わうことができます。
ぜひキンカンを自宅で育てて、庭で暮らしで楽しんでください。
Credit 文 / 小川恭弘 - 園芸研究家 -
おがわ・やすひろ/1988年、東京農業大学農学部農学科卒業。千葉県館山市の植物園「南房パラダイス」にて観葉植物、熱帯花木、熱帯果樹、多肉植物、ランなど温室植物全般と花壇や戸外植物の育成管理のほか、園全体のマネジメントなどの業務に18年携わる。現在フリーランスとして活動。著書に『わかりやすい観葉植物』(大泉書店)、『ハイビスカス』(NHK出版)がある。